(書評)そして僕らはいなくなる

著者:にかいどう青



優等生の「着ぐるみ」をかぶって日々を過ごす宗也。行方不明になった幼馴染を探しに出た先で事故にあった彼は、断片的な幻覚に襲われるように。少女をバラバラにする。まるで、殺人犯のような視点が展開される中、クラスでも孤立している少女・志緒と共にその謎を追うが……
という風に書くと、物語がいきなり展開するように感じるのだが、実は、主人公がその奇妙な幻覚を見るようになるまで50頁くらい。そこまでは、奇妙な幻覚の主たる「僕」の鬱屈した思い。そして、クラスに溶け込みながらも、自分自身の立場に違和感を感じる宗也と、クラスで孤立しながらも平然としている志緒に対する共感。そんな、それぞれの立ち位置が判明してから……
この作品、行方不明になった幼馴染。そして、犯人は誰か? という謎解きもあるんだけど、それ以上に宗也、志緒の心情描写というのが見どころだと思う。
有名人の両親を持ち、クラスでも優等生として溶け込んでいる宗也。しかし、以前は太っていたことで周囲からイジメられ、また、現在も有名人の両親というものの存在により色眼鏡で見られてしまう。自分とはいったい何なのだ? スクールカーストの上の方におり、実際、そういう面々との交流も多いが、しかし、自分の居場所はそこではない、という悩み。だからこそ、志緒という孤立をしようと自分を偽らない存在が気になる。
一方の志緒。周囲から孤立し、周囲の人間が全員死んでしまえばいい、とすら言い放つ。そんな彼女に取って大きなものは、障害を抱えた姉。両親は優しく、彼女自身、姉のことが大好き。けれども、周囲の人間は姉のことを嘲笑い、そして、やがては自分が姉の面倒見なければならない、という状況に、宗也同様、自分はいったい何なのだ? という思いを抱えている。大好きだけど、大嫌い。そんな彼女の想いにも共感できる。っていうか、自分自身、志緒のような姉は抱えていないけど、でも、年老いた両親の世話を将来……とか、考えるとねぇ……という話でもあるし。
さらに、厳しい父親に、全く信用してもらえない「僕」の存在もまた……
主要な人物たちの抱えている、「自分は何なのだ?」というアイデンティティを巡る葛藤の物語として十分に読み応えのあるものとなっている。
ただ、逆に言うと、この事件そのものは……。トリックとか、その辺りは良いとして、結局、犯人は何故? という動機の部分とか、そういうのがよくわからず、しかも、終盤、突如として動き出して……となるので……。謎解きの点では、かなり肩透かし気味。その辺りが、ちょっともったいない、とも感じた。

No.4755

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