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(書評)噺家ものがたり 浅草は今日もにぎやかです

著者:村瀬健



将来に悩む大学生・千野願は、就活の面接に向かうタクシーのラジオから流れる落語に心打たれ、衝動的にその落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意する。何度断られても粘り強く頼み込み、前座見習いにしてもらうのだが……
第24回電撃小説大賞・選考委員奨励賞受賞作。
落語を題材にした小説。個人的には、大倉崇裕氏の「季刊落語」シリーズや、『オチケン!』シリーズなどが思い浮かぶ。これらに限らず、落語を題材にした作品って、古典落語が多く、それに倣った形で展開するような話が多いけど、本作は創作落語というのは珍しい。まぁ、それでも人情モノ、というツボは外していないのだけど。
物語の中心線となるのは、前座見習いとなった願の奮闘。当初の弟子入り志願から始まり、心構えから、人を笑わせるとは何か? そして、師匠と弟子の関係について……。そもそもが、落語について何か学んでいるわけですらない願。衝動的に大学を辞め、弟子入り志願をするが、ただ真面目な人生から見ただけだと諭される。さらに、喋る、ということも全くできない。それでも……。終盤に破楽が言うように、不器用で何もない。しかし、覚悟だけはしっかりある。そんな願の奮闘記としてまず楽しめた。
そして、この作品の最大の特徴は、その破楽がよく言う「最後にどう畳むかが大事」ではないけど、だんだんとその人情モノとしての味がついていく、というところだろうか。願が弟子入り出来た、その決定打が落語家を引退して嫁ぐ姉弟子の結婚に関して、願が言った言葉……と、この時点でも人情モノなのだけど、進めば進むほど、その色合いが濃くなっていくよう感じる。特に、破楽が願の弟子入りを母に告げる3編目。そして、兄弟子らについての4編目ではそれが色濃く出ている。協会のようなものに属さず、言い方は悪いがイロモノばかりを集めたような破楽一門。しかし、そうなったのも、破楽の師匠として、そして、弟子たちの「親」としての愛情。さらに、兄弟子の「弟」に対する愛情があふれていて、良い終わり方だな、というのを強く感じた。ぶっちゃけ、序盤はちょっと……と思ったのは秘密。
なので、とりあえず、最後まで読んでほしい、というのは強く思う。

あと、これは個人的にすごく気になった個所なのだけど……師匠、破楽の台詞回しがちょっと引っかかったのは確か。というのは、べらんめぇ口調的なものと、ですます調のものが入り乱れた喋り方になっているから。多分、実際に落語家がそういう風に喋っているのならば、その変化が独特の調子になって引き込まれる部分に繋がるのだろうけど、文字でそれを表されると、読み慣れるまでちょっと時間がかかる。

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