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(書評)サイメシスの迷宮 逃亡の代償

著者:アイダサキ



東京都下で発生した幼女殺害事件。超記憶症候群のプロファイラー・羽吹は、遺棄の状況から、8年前に埼玉県で発生した連続女児殺害事件を模倣していることに気付く。その犯人・入谷謙一は、ふた月前に獄死。羽吹は、相棒の神尾と共に入谷の周辺の聞き込みをするのだが……
シリーズ第2作。
前作は、羽吹と神尾が出会い、両者が「相棒」になるまで、という部分に多くの分量が割かれていたのだけど、本作は最初から相手のことを十分に分かり合っている状況。っていうか、神尾が十分に羽吹のことを分かっていて、上手くいなしたりしつつ、一方で、羽吹がツンデレさんになっている、としか思えなかった(笑)
今回のエピソード、一言で言えばかなり入り組んでいるな、というのを何よりも思う。
事件の発生を受けて、8年前の犯人・入谷謙一の周辺に聞き込みに行く羽吹たち。加害者の弟・俊は、事件当日にアリバイがあり、また、殺された女児の両親にもまた……。しかしその中で、わずかに感じられる違和感。そんな中で起こる第2の事件。しかし、その現場は、第1の現場と同じで……
何を書いてもネタバレになりそうなので、凄く曖昧な書き方をすることにするのだけど、キーとなる人物の「嘘」が印象的。先に「わずかに」と書いたのだけど、その嘘の内容は全てが極めて大きなポイントとなるもの。その嘘を一枚剥いで、次の事実へとつながり、そこでの捜査により、また新たな嘘が発見される。その連続の中で作中の人間関係の構図がだんだんと反転していく様が実に鮮やか。
そして、その真相が明らかになったことで響くのがタイトルの意味。
そもそものきっかけが現実からの逃避から始まった関係。そんなときに発生した事件。その時にその人物が取った行動もまた、一つの逃亡と言えた。そういった現実からの逃亡が回りまわって結びついてしまった。その皮肉な因果が、まさに「代償」ということなのだろう。その中で、犯人の行動が、その人物にとって一つの救いとなっていたのは、わずかながらも光なのだろうけど……
その上で、前巻の事件の背後にいた存在が、今回も。しかも、それは古くから羽吹を……というのが明らかに。羽吹自身も自分の過去を、という意識があることが強く印象付けられる形で進んでいく。この辺りも今後は主眼になっていくのだろうな。

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