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(書評)キネマ探偵カレイドミステリー 輪転不変のフォールアウト

著者:斜線堂有紀



嗄井戸の部屋で発見したスナッフフィルム。奈緒崎は、嗄井戸の過去の事件を解決すべく、フィルムアーキビストである菱崖に協力を依頼して……
シリーズ3作にして、完結編。ただ、冒頭に書いたような嗄井戸の過去の事件、すなわち、嗄井戸姉弟が誘拐され、姉の叶が殺害された、という事件が中央に横たわっているのだけど、3編構成で前半の2編はいつも通りの話、という印象。
1編目『逆行無効のトライアンフ』。奈緒崎のかつての恋人であり、間もなく留学をする小宮先輩。そんな小宮先輩に誘われて映研が作ったという、『バックトゥザフューチャー』のデロリアンの模型を見に行く。しかし、そのデロリアンは一瞬にして消えてしまって……
密室状態の部室から消えたデロリアン。どのように? 映画の撮影技術に関する蘊蓄を交えながら、そして、その状況の不可解さから謎を解く。いかにも、この作品らしい作風。明らかに変人ではあるが、小宮先輩に対して一途な映研の部長とかも良いキャラクターで読んでいて楽しかった。
2編目『依然必然のアクチュアリー』は、奈緒崎がバイトをしていたレンタルビデオ店で店員が殺害され、第一発見者である奈緒崎が容疑者としてマークされてしまう。現場にはDVDが遺されており、被害者は「Na」というダイイングメッセージがあったため。それは、奈緒崎のイニシャルで……
ダイイングメッセージをどう解釈するのか? というのは、ミステリ作品ではおなじみ。その中で、どうして奈緒崎が真犯人により、犯人に仕立て上げられたのか? この辺りは「らしい」んだけど……やっぱり、ダイイングメッセージものの強引さを感じずにはいられなかった。
そして、物語の完結編となる3編目『輪転不変のフォールアウト』。正直なところ、真犯人はあからさまに怪しいのだけど、それよりも、ここで見るべきものは、その動機たる部分、なのかな?
このシリーズ、ずっと映画を題材にしてきたのだけど、その中で印象に残るは映画というものの影響。例えば、ここで収録されたエピソードでも、1編目の、映画の撮影方法というのが一つのトリックになってきた。過去のエピソードでは、「あの映画が見たい」という執念を持った人とかも出てくる。勿論、映画を語る上で「このシーンのリアリティがすごい」なんていう評価は登場するだろう。しかし、そのリアリティは、文字通りの「リアル」に勝てるのか? 本物のリアルを求めた犯人。それを否定する嗄井戸。事件後、嗄井戸が語ったエピソードはそれを上手く示している。その前に、嗄井戸のフィクションで、というのも伏線になっていてうまくまとめたな、という感じ。
一旦、これで終幕、ということなのだろうけど、今後、日常の謎モノとして続けるのは可能なはず。個人的には殺人とかより、この題材なら日常の謎の方が好きなだけに、そちらに舵を切って物語を続けてほしいな、と思う。

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