FC2ブログ

(書評)祈りのカルテ

著者:知念実希人



純正医大付属病院で研修医をしている諏訪野良太。精神科、外科、皮膚科……様々な科を回る良太だが、そこで厄介な患者が現れて……
という形で綴られる連作短編集。全5編を収録。
著者の作品は、ハートフルなものも多いのだけど、本作は短編ということもあって、実際には重い話もありながらも、ライトな印象を受ける。それを強くするのは、毎回、指導医から「患者に感情移入しすぎる」と言われる主人公・諏訪野のキャラクターによるところが大きいのかな?
例えば、1編目。2か月に1度くらいの割合で薬の大量服用で入院してくる患者の謎を解く1編目『彼女が瞳を閉じる理由』。文字通り、一定間隔で入院してくる女性。精神的に不安定で、夫と離婚をしてからそのようになった、というが、大量の薬品を服用したという割に……というところから諏訪野は真相に気づく……。この話なんかは、かなり重い話なんだけど、それをそう感じさせない優しさを感じる。
その優しさを一番感じる話は3編目の『冷めない傷跡』かな? 離婚をし、シングルマザーとして子供を育てている女性が火傷を負って入院した。しかし、その火傷が入院中になぜか広がっていて……。過去に入院した際、MRIを撮っていない。本人の説明と状況の乖離。火傷で入院した際、一人の男性が訪れている。シチュエーションとしては、1編目に似ているのだけど、犯罪などが関わっているわけではなくそこにあるのは、ただ、相手を思っての行為。その真相を見破った諏訪野。そして、彼女にアドバイスをする指導医の言葉がすごくよかった。
そんな中で、最後の『胸に嘘を秘めて』。心臓の病で入院している有名女優。移植をするしか回復の方法はない。しかし、それは日本では難しい。アメリカでの移植を準備中、という中、彼女についての情報漏洩が起き……
この話はタイトルが全てを表しているな。情報漏洩を機にした義援金募集。そこに対する批判が出る中、今度は事務所の不法行為のリーク。さらに、その女優の言っていたことの嘘。家族関係……。文字通り、この物語の中心にいるのは女優なわけだけど、その女優が行った命がけの演技の辿り着く先……。結構、強引な締め方ではあるんだけど、その女優の生きざまが凄く格好良かった。
まぁ、法律的な話とか、そういう部分を鑑みると、これは良いのかな? という気がする部分はあるんだけど、それをハートフルさで覆い隠すくらいの雰囲気の良さが出ている作品じゃないか、と思う。

No.4775

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト

COMMENT 0