(書評)海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと

著者:石川博品



上原蒼は、かつて自身も入院していた病院へと向かう。そこで、彼は、彼女と話をする。半年前、突如として発生した謎の奇病からの出来事を。
いや、とにかくこの作品、「どこに転がるのかわからない物語」というのを言わずにはいられない。
物語は、病院で、半年前の出来事を語る、という形で、その時の出来事を語る形で綴られる。その内容が本当に……
主人公・上原蒼は、山中の田舎町で、将来、何をしたいのかもわからないままに過ごす高校生。ただ一人、山を走るのが好きで、それだけをして。そんなときに発生した謎の病気。身体に金属の鱗のようなものが出来てしまう病。両親も、ご近所さんも、あっけなくそれで死亡し、町は閉鎖。しかし、そんな町でひっそりと暮らす蒼だったが、そこに異形の存在が……
表紙やタイトル、といったものを見ると、病気の少女とのボーイミーツガールもの、という感じなのだけど、本編として描かれるのはパンデミックものであり、サバイバルものであり、そして、異能バトルもので……。思わぬところから、思わぬところへと話が進んでいって、どこへ転がっていくのかわからない。その中で、同じような存在と出会い、「彼女」に恋をして……
読中は、なんで、この表紙で? とか、そういう風に思うところも数多くあったんだけど、それでも最終的には表紙のような、青春モノへと収束していくのが流石というところか。何もなかった少年が、奇病を、そして、出会い、壮絶な戦い、仲間の死、そのようなものを目の当たりにしながら見つけ出したもの。暗い情熱かも知れない。しかし、そこで見つけ出したもの。その根底にあったものは……
「なにかになりたいという熱病」
周囲から見たら情けないかも知れない。バカバカしいかも知れない。冷静に考えれば、というかもしれない。でも、それがなければ、そもそも何もなしえない。当初、何もなかった蒼が、何かを手にした。そういう意味では、パニックものであり、異能バトルものであり、しかし、やっぱり青春モノ、という風に言えるのだろう。

No.4781

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