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(書評)ソロモンの偽証 第3部 法廷

著者:宮部みゆき





いよいよ開廷した学校内裁判。「空想です!」 弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は存在しない。問題児である、ということからスケープゴートを作り出しただけだ。対して、検事・藤野涼子は事件の目撃者であり、告発状を出した三宅樹理を証人出廷させ……
長かった物語もいよいよ最終章。物語は、実際の裁判と同じように、検察・弁護人、双方の側がここまで集めた情報を出し、証人を出廷させ、その言葉についてそれぞれが質問を重ねることによって進展していく。
第1部の終盤、そして、第2部のラストと、それぞれ、そこまでの前提と思われていたものが崩れて、どんなひっくり返しが!? ということを考えていたのだけど、読み終わってみれば、ある程度、当初、前提としていた通りだったな……という感じではある。そもそもの裁判の焦点である大出俊次は有罪か無罪か? 被害者と言われる柏木卓也は何を考えていたのか? そして、三宅樹理、神原和彦の目的は……
こういうと何だけど、第3部で出てくるそれぞれの話は既に第2部の時点で出そろっている、と言える。勿論、検察側、弁護側、双方とも別々に行動をしているわけで、互いに相手の持っている情報は知らない部分が多く、それをすり合わせることによってその背後が明らかになる、という構図であることは間違いないわけだが……
とにかく、この作品を読んでいて感じたのは、学校という極めて狭いが、しかし、生徒たちにとっては世界の多くを占める世界の歪さ。思慮深く、しかし、どこか醒めた思いを抱えていた柏木卓也。そんな彼にとって、学校という場所は理解できない場所であった。一方で、立派なことを言っても、大出俊次という悪ガキを放っていた学校。その中で地獄を見た三宅樹理にとっての学校。そして、父が事件を起こした、という過去を背負った神原和彦にとって……。それぞれが抱えた想いを吐露し、その心の叫びが重なっていく終盤の展開はあまりに重いもの。ネタバレになってしまうけど、検事である涼子が敗れた、というのは、あまりに正しく、そして、現在の言葉でいうスクールカーストの上位にいる彼女にとって見えていなかった、いや、見ようともしなかったものだから、という部分が大きかったからのように思う。
先に書いたように、ひっくり返しとか、そういう衝撃はない。けれども、その分、ストレートに心の叫びが綴られていた作品のように思う。

なお、私が読んだ文庫では、6巻の巻末に、書き下ろしの杉村三郎シリーズの短編(涼子のその後を描いた物語でもある)が収録されているのだけど、ちょっと軽い感じの話で本編とはカラーが違っていたかな? と思う。

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