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(書評)コンビニなしでは生きられない

著者:秋保水菓



大学生活に馴染めずに中退した白秋にとって、バイト先のコンビニは唯一の居場所。そんなコンビニに、研修生としてやってきたのは、女子高校生の黒葉深咲。白秋は、彼女の教育係に任命されるのだが、彼女が来て早々、奇妙な強盗事件が発生して……
第56回メフィスト賞受賞作。
なるほど、こういう形でまとめてきたか、というのが読み終わっての第一声。
物語は、連作短編の形で綴られる。冒頭に書いた奇妙な強盗。なぜか、何度も安い品物を購入していく老婆。頻繁に訪れる男に掛けられた誘拐犯疑惑……と、次々と奇妙な事件が発生していく。それぞれ、その真相が明らかにはなるのだけど、理屈が通っているようで通っていない、という奇妙な感覚になるエピソード続き。例えば、1編目。強盗がレジにあった金を奪った……のだけど、1か所しかない出入口を人が通るときに鳴るはずのチャイムはなっていない。つまり、店内の客の一人が……? しかし、なぜ? 一応、理屈はつけられているのだけど、色々と無理がないか? という結末で……
その辺り、主人公の白秋自身も感じていることなのだけど、物語の中盤で、そのコンビニで過去に起きた事件が判明し、そして、黒葉が一体、何者なのか? という方向へ……
正直なところ、黒葉がやっていたことは色々と迂遠でちょっとした違いで一気に破綻してしまう気がするし、それ以上に、このコンビニの従業員ほかがひどすぎるんじゃないか? という気がする。ただ、その一方で、そういう「どうしようもない人」であっても何か憎めない、なんていうことがあるのは理解できるし、また、そういう場所でも、自分の居場所なんだ、という気持ちもわかる気がする。大学を辞めても、何も変わらない態度で接する白秋の母とか、そういうのも含めて「居場所」を巡る物語、というものでまとめ上げているのは上手い。そういう意味で、この作品タイトルも、上手く作品を表していると感じる。
先にも書いているように、色々な強引さは感じる。ただ、物語の核となる部分はしっかりと一貫している。そんな風に感じた。

No.4792

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