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(書評)警視庁捜査二課・郷間彩香 パンドーラ

著者:梶永正史



監察課から郷間班に来た捜査協力の依頼。それは、新宿署の利根警部が暴力団から金を受け取っている、というもの。利根に接触していた暴力団員が3日目に刺殺体で発見され、利根は消息不明。果たして、利根が殺人犯なのか? 捜査を進める郷間たちだったが……
シリーズ第4作。
なんか、物凄く規模がでかくなってきた。利根警部の不正疑惑から浮かび上がってきたのは、道路工事を請け負う会社の経理データ。過去に談合による行政処分を受けた会社。しかし、現在は、そのようなことはない、という。だが……
「あやめ」という名前が紡ぐ談合疑惑。そこには、IT企業の影。だが、入札価格は、予定価格と比べて安くなっており、しかも、関係者と思われる行政側に金銭の授受などを受けた形跡はない。本当に談合が行われているのか? そしてそれはいったい、何を目的に行われているのか? しかも、大物政治家まで関わっている、という疑惑も見え隠れ……
今回は、その不可解な談合疑惑と、それを突破しようとする郷間の猪突猛進っぷりが何よりも印象に残る。
そもそもの越権行為から始まった郷間に対する厳しい処分。しかし、それであっても歩みを止めずに、次から次へと体当たりでぶつかっていく。何しろ、その疑惑の大物政治家にまで当たって砕けろの精神で聞き込みにいっちゃうくらいだし(笑) その結果、完全に凹まされた郷間を、よくわからん意見で復活させてしまう秋山もなかなかいいキャラとして光っている。……「死にパン」って何やねん(笑)
その上で、その談合の動機っていうのはなかなか印象に残るところ。金銭というわかりやすい報酬のため、であるならばメリット・デメリットの線引きによってそれを止めることも可能。しかし、今回の談合の裏にあるのは「信念」というもの。そして、それは確かに一つ、正しい、と思わせるだけのものも持っている。だからこそ、郷間もまた打つ手を喪ってしまう。だが、そこに吉田が告げたのは……
「信念」に対抗できるものは「信念」。この戦いは見ごたえがあった。そして、だからこそ、の決着になったわけだろう。
わかりやすく犯人が逮捕されて、という結末ではない。しかし、中盤以降の郷間の揺れ動きに翻弄され、最後まで面白く読むことが出来た。
シリーズとしては、ここで一区切り、という形なのだけど、誉田哲也氏の姫川シリーズみたいに、続いてほしい。

No.4798

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