FC2ブログ

(書評)ため息に溺れる

著者:石川智健



「ため息に溺れてしまいました」 立川で、医学界、政治にも大きな影響力を持つ蔵元医院の養子・蔵元指月が奇妙な死を遂げた。腹を切った後に遺書を書き、頸動脈を切る、という状況であったが、密室であったこと、遺書の存在から警察は自殺として判断する。しかし、それから数日。蔵元家は、その事件を再調査するよう依頼する。立川署の女性刑事・羽木薫は、その事件の調査をすることになるが……
帯では「ラスト10頁で世界が一変する」とあるけど、それはあまり感じなかったかな。
物語の導入としては、冒頭に書いた通り。医療の世界だけでなく、政治の世界にも大きな影響力を持つ蔵元医院で起きた事件。自殺と断定されたものの、指月が自殺するはずがない、と信じる妻の舞子は、再調査を依頼。自殺で済ませたい蔵元家に対し、薫は調査をすることになって……
両親による虐待を受け、施設で育った指月。しかし、その優秀さから、医学部へと進み、そして、婿養子として蔵元家へと入った。蔵元家の家族構成は、総帥ともいえる庸一郎。医師であったが、数年前に自殺した長男・真一。医師になれなかった次男・裕二、指月の妻・舞子といった面々がおり、医院を継ぐ、という意味で、指月がその後継者と見られていた。そして、裕二はハッキリと指月を嫌っていて……なんていう関係性もあり……
この辺りからもわかるけど、結構、クラシカルな設定の物語と言えると思う。その中で、指月が抱えていた秘密。蔵元家の面々の抱えていた秘密、といったものが明らかになって……
露骨な伏線、とでも言うのかな? 指月の抱えていた秘密そのものは、彼を巡る周囲の言動などから、「こうだろうな」というのは予想することはたやすいと思う。そして、そのことが、ある意味、名誉を重んじる蔵元家にとって大きな衝撃になって……
ラスト10頁の内容。これって、世界観が一変というよりも、「より、掘り下げた」という感じがするのだ。それまでも、時折挟まれる指月視点の回想によってばらまかれたピースが回収された、とでもいうか。
この指月の考えって、おそらく、多寡はあるにせよ、誰でも持っているものだと思う。エゴイズムと言えば、エゴイズムだけど、でも、って感じだし、そこまで極端にならずとも……はあるはず。その辺り、指月の出自とかで、しっかりと回収しているのは素直に上手いと思う。
細かなところで、「え?」と思うところはあるものの、指月の心情というところでまとめたのは評価したい。

No.4804

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト

COMMENT 0