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(書評)凶犬の眼

著者:柚月裕子



平成2年。広島県呉原市での事件を経て、日岡は僻地の駐在としての日々を過ごしていた。そんなある日、懇意にしているヤクザから建設業者の社長として紹介されたのは、指名手配犯の国光であった。彼を逮捕すれば、刑事として復帰できる。そう考える日岡だったが、国光は、自分の首を預けるから、しばらく時間が欲しい、と訴え……
『孤狼の血』の続編となる作品。
前作は、〇暴刑事として赴任した日岡が、先輩である大上に鍛えられ、〇暴刑事として何をすべきなのか? 自分たちは、一体、何のために存在しているのか? というのを叩き込まれる物語であった、という風に言えると思う。それに対して、本作は、そんな教えを享受された日岡が、どう振る舞うのか、というのを孤独な中で考え抜く、というようなストーリーに仕上がっていると言えるだろう。
冒頭に書いたように、駐在さんとして平穏だが、物足りない日々を送る日岡。そんな中で発見した指名手配犯・国光。インテリヤクザとして頭角を現し、そして、対立する組織の組長を殺害したとして指名手配されている男。自分を逮捕させてやるから、もう少し……そんな国光は信頼するに値する存在なのか? そして、なぜ、時間が欲しいのか?
交流の中で見えてきたのは、国光という男の存在感。ただ、暴力をチラつかせて、金儲けをしているだけではなく、義理を通す男。そして、その子分たちにも絶大な信頼を持たれている男。決して、気を許したわけではない。しかし、奇しくも、そんな国光の存在が、全国最大規模の暴力団組織の抗争の手打ちにとって、カギを握る存在となっていて……
ある意味では、前作のような派手さ、というのはない。ただ、前作で大上が示した「〇暴刑事として、守るべきものは何なのか?」という線引きを考え、それを守ろうとする日岡の姿だけ。そのため、前作での大上と同じように日岡もまた、違法な行動などにも出ていく。しかし、自分が泥をかぶることにより、普通の人々に害が及ばないようにする。そんなある意味で、成長した日岡の姿に魅せられた。
まぁ、今回は、国光という存在があまりにも格好良すぎて、暴力団員の美化だとか、そういう印象がないわけではないのだけど、これは、物語として作る上でで仕方がないのかな? 国光がただのクズだったら、物語自体が成立しないわけだし(笑)
前作を受けての、日岡のその後。そういう意味では、正統派な続編と言えるだろう。

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