著者:中山七里


14年前に凶悪事件を起こした御子柴の元へ、30年ぶりに訪れた姉・梓。母・郁美が再婚した夫を殺害した容疑で逮捕された、という。接見した母は、殺人を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、自らの過去と向き合うことになって……
ということで、御子柴シリーズ第4作。
前作の感想として、ひっくり返しよりも、御子柴の掘り下げを重視した印象、ということを書いたのだけど、本作も同様という感じ。何しろ、今回は御子柴の家族関係といったものがメインになっているわけだし。
物語のメインとなるのは、基本的には冒頭に書いた通り。凶悪犯罪者を生み出してしまった家、ということで、御子柴の両親は周囲からの冷たい視線に晒され、賠償金をひねり出すために父は自殺。遺された母と姉は、極貧の中、支えあいながら暮らしてきた。そんな中で、母は、資産家の夫と出会い、再婚をしたのだが……
シニア向けの「お見合いパーティー」で出会ったという母と夫。しかし、そのパーティーの参加費は高額であり、検察側は、夫を殺害し、その資産を奪うことを画策していたという筋立てを組み立てる。だが、母はそれを否定。そんな中、死亡した夫の前妻は、通り魔事件で殺害されていたことが判明する。しかも、その犯人は、重度の統合失調症ということで刑法39条が適用されていたことが判明し……
丁度、少し前に読んだ『連続殺人鬼カエル男ふたたび』と同じく、刑法39条ネタが出てきて、「またか」と思った部分がないではない。ただ、江戸川乱歩賞をはじめとして、社会派ミステリを多く手掛けている講談社の刊ってこともあって、編集者さんもしっかりと仕事をしたのかな? 刑法39条は理不尽だ、とかの部分へとはもっていかず、あくまでも「ある1つのケースの中での怒り」といったものを重視したのであまり違和感などを感じずに読むことが出来た。しかも、自分では過去を捨てた。あくまでも、冷静に、依頼人の利益のために戦う、と自称する御子柴が、自分が逮捕されたのちを直視せざるを得なくなって……という部分をメインにしたため、より、彼の掘り下げになっていたと感じる。
法廷での逆転劇とか、そういうところでの衝撃はやや弱めだったけど、このシリーズは安定して面白い。
No.4864

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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14年前に凶悪事件を起こした御子柴の元へ、30年ぶりに訪れた姉・梓。母・郁美が再婚した夫を殺害した容疑で逮捕された、という。接見した母は、殺人を否認。名を変え、過去を捨てた御子柴は、自らの過去と向き合うことになって……
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前作の感想として、ひっくり返しよりも、御子柴の掘り下げを重視した印象、ということを書いたのだけど、本作も同様という感じ。何しろ、今回は御子柴の家族関係といったものがメインになっているわけだし。
物語のメインとなるのは、基本的には冒頭に書いた通り。凶悪犯罪者を生み出してしまった家、ということで、御子柴の両親は周囲からの冷たい視線に晒され、賠償金をひねり出すために父は自殺。遺された母と姉は、極貧の中、支えあいながら暮らしてきた。そんな中で、母は、資産家の夫と出会い、再婚をしたのだが……
シニア向けの「お見合いパーティー」で出会ったという母と夫。しかし、そのパーティーの参加費は高額であり、検察側は、夫を殺害し、その資産を奪うことを画策していたという筋立てを組み立てる。だが、母はそれを否定。そんな中、死亡した夫の前妻は、通り魔事件で殺害されていたことが判明する。しかも、その犯人は、重度の統合失調症ということで刑法39条が適用されていたことが判明し……
丁度、少し前に読んだ『連続殺人鬼カエル男ふたたび』と同じく、刑法39条ネタが出てきて、「またか」と思った部分がないではない。ただ、江戸川乱歩賞をはじめとして、社会派ミステリを多く手掛けている講談社の刊ってこともあって、編集者さんもしっかりと仕事をしたのかな? 刑法39条は理不尽だ、とかの部分へとはもっていかず、あくまでも「ある1つのケースの中での怒り」といったものを重視したのであまり違和感などを感じずに読むことが出来た。しかも、自分では過去を捨てた。あくまでも、冷静に、依頼人の利益のために戦う、と自称する御子柴が、自分が逮捕されたのちを直視せざるを得なくなって……という部分をメインにしたため、より、彼の掘り下げになっていたと感じる。
法廷での逆転劇とか、そういうところでの衝撃はやや弱めだったけど、このシリーズは安定して面白い。
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