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(書評)「私が笑ったら、死ぬんだ」と、水品さんは言ったんだ。

著者:隙名こと



「15分で1万円のバイトに興味はありませんか」 クラスでも目立たず、友達もいない高校生・駒田に、となりの席の美少女・水品さんは秘かに声をかけてきた。色々と疑念を抱きながらも、そのバイトを引き受けた駒田。水品さんが、決して笑わない理由と、その仕事の目的は……
第7回ポプラ社小説新人賞・特別賞受賞作。
「そう来ましたか!」というのがまず思ったこと。
物語は3章構成で綴られ、第1章では、指定の時間に、雑誌を購入し、指定の場所でそれを読め、というもの。第2章では、指定の場所で、ある人物に「ここはどこ?」と道を尋ねよ、というもの。それぞれ、非常に単純な行動である。しかし、駒田が聞かされたのとは別の意図、別の目的があって……という形で物語が進行していく。その点だけを取り出せば、「日常の謎」のミステリ短編集と言えるのだろう。しかし、本作は紛れもなく長編作品である、という風に思う。
というのは、まず、それぞれの章で、謎解き、という部分よりもその中で明かされる駒田、水品さん、ホイミさん(水品さんのバイト先の上司)の過去、現在の行動というようなものがクローズアップされるため。勿論、それぞれのケースの謎解きはしっかりとまとめられているのだけど……。そして、そのまとめとも言える第3章で……
他の方の感想とかを見ていると「悪意」を巡る物語、とあるんだけど、本作の悪意って、悪意は悪意でも、「無自覚な悪意」とでも言うべきものだと思う。つまり、やっている側は基本的には「あいつを傷つけてやろう」というつもりはなくて、ただ、「面白い」とか、そういうつもりで騒いでいるもの。しかし、それだって確実に当事者を傷つけるし、また、その姿は醜い。そのような形で傷ついたからこそ、の、水品さんがやったこと。無自覚な悪意というものを明らかにしたこと。そして、同じような経験をしたからこそ動いた、駒田の決意。この辺り、メッセージ性に優れた作品だな、というのを思わずにはいられなかった。
水品さんにしても、ホイミさんにしても、結構、軽いノリのやりとりが多いだけに、もっとライトな感じなのかな? と思っていたのだけど、意外とずっしりと来る作品。ギャップが……っていうのもあるかも知れないけど、最初からシリアスだったら読みづらかったかもしれないし、これでバランスが取れているのかも。

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