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(書評)彼女のL 嘘つきたちの攻防戦

著者:三田千恵



幼いころから、他人の嘘を見抜くことが出来る遠藤正樹。周囲の人間の嘘にウンザリとする中、彼女が心惹かれているのは、決して嘘をつかない少女・川端小百合。そんな川端から「自殺」として処理された同級生は、クラスのアイドル・佐倉成美に殺された、というもの。その少女・佐倉は、常に周囲に嘘を振りまく少女で……
嘘を見抜く能力。ライトノベルに限らず、しばしば出てくる能力ではあるけど、その設定を本当に上手く使っているな、というのをまず思う。
嘘を見抜く能力。それって、便利なように思えるけど、実際にはそんなことはない。相手の言っていることが一々、虚偽である、とかを知っていれば人間不信に落ちってしまう。また、そのことを周囲に知られれば、その時点で人間関係がギクシャクしてしまう。事実、遠藤は、警察官である父との間に距離があり、父は対面で何も話をしてくれない状態になってしまった……。そんな彼だから、周囲からは空気を読まない、不思議ちゃんと言われても、嘘をつかない川端のことに惹かれたし、嘘だらけの佐倉に嫌悪感を覚えている。そんな佐倉について調べることになったのだが……
常に嘘を振りまいている佐倉。けれども、その嘘の根底にあるものは。周囲に気を使い、周囲の期待に応えようとしている。そんな彼女の本音。しかし、川端の親友であった小林の死について、「私が殺した」と真実を告げつつもその周辺はやはり嘘だらけ……
「嘘」を巡る物語。父との確執などから、嘘というものに嫌悪感を覚える遠藤。しかし、佐倉の本音に触れ、さらに、川端とは違った視点で、死んだ小林についての姿。小林もまた、嘘だらけだったという佐倉。しかし、小林の嘘は、川端のためのもので……。そんな中、父の嘘の真意について知り……
川端の過去、遠藤の過去。佐倉の状況。小林の真意。それぞれの状況が明かされた中で、それぞれの「嘘」に対するスタンスが微妙に、時に劇的に変わっていく様は凄く鮮やか。事件の「犯人」については、ちょっと唐突感があるとも感じたところはあるけど、テーマがしっかりとしていて、最後まで凄く惹きつけられた。

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