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(書評)猫と狸と恋する歌舞伎町

著者:額賀澪



変身能力を使って男子大学生のふりをしながら、気儘な日々を送る化け猫にして、オスの三毛猫である千歳。彼の目下の悩みは、恋に落ちた女性・椿に自らの正体を明かせないこと。そんなある日、椿の周辺に怪しげな男たちがいることに気づいた千歳は、その男たちを驚かせてやろうとするのだが……
まさか、こんな話だったとは!!
ネタバレにはなってしまうけど、タイトルやら序章やらでわかると思うので書いてしまうと、千歳の正体は化け猫。一方の椿の正体も化ける能力を持っている狸。そして、それぞれ、お互いの正体は知らずに、心惹かれてはいるけど、正体は明かせない、と思っている状態、から始まる。
こうなると、互いに人間ではない、という秘密を抱えた二人が、切ない思いを抱えて、すれ違って……っていうラブストーリーかな? と思うでしょ。でも、そういう話じゃないんだよな(笑)
これまたネタバレになってしまうのだけど、椿の周囲に見え隠れしていた男たちというのは、所謂ヤクザの愛宕組の面々。そして、澪は、ヤクザの親分の娘。……しかも、狸。「人の娘に手を出すな!」と別れるように脅され、さらに、監禁状態にされて、愛宕組の仕事をさせられるようになって……という風に転がっていく。もう、この時点で予想外の展開過ぎて、どうしたものか、と思ってしまった。
ただ、そんな予想外の方向の物語だったのだけど、読み終わってみると「家族」というテーマがしっかりと横たわっている、というのが強く感じられる。主人公の千歳からして、化け猫の一族に生まれたものの、稀に生まれる「本物の」化け猫ということで家族に疎まれ、事実上、天涯孤独のような状況。一方の椿は、ヤクザの娘、ということで孤独を味わい、そんな家のことを嫌っている。一方で、愛宕組は、文字通り「家族」のように組員を守る(勿論、家族ではない千歳は、徹底的に使おう、という魂胆) そして、愛宕組の命令で千歳が監視することになった父子、彼らが接触していた老婦人……
家族をテーマにした作品って、「家族って素晴らしい」的なものになったり、逆にミステリ作品とかだと「家族だからこその戒めに苦しむ」なんていう話になったりと、極端に振れるようなものが多いのだけど、家族だからこそ、の絆もあり、一方で、家族だからこそ、のいざこざもあり、と、ある意味では凄く等身大な家族像を、色々なアレコレを交えながら描いているのではないか、と感じる。家族の団結が凄いからこそ、周囲に傲慢になってしまったり、家族内関係で色々とあったりとかは、どこでもあるだろうし。読みながら、そういうのを思い浮かべてしまった。
一応、「別れろ」と言われた千歳と椿の関係も復活して、とかあっての終わりになるわけだけど……正直、終盤の吹っ切れた椿さん、怖い(笑) でも、そういうのも、家族関係……なのかな?(笑)

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