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(書評)おっさん吸血鬼と聖女。

著者:稲荷竜



「おじさん、朝ですよー!」「朝日が痛い!」 伝説の吸血鬼。神にすら刃向かうという真のバケモノ。……と呼ばれたのも昔の話。王国の片隅にある幽霊屋敷でひっそりとヒキコモリ生活を送る冴えないおっさんだった。教会から来た聖女は、そんなおじさんを吸血鬼だとは思わず、社会復帰させるべく奮闘するのであった……
というような設定で綴られるショートショート作品集。
物語の設定は冒頭に書いた通り。吸血鬼なのだけど、既に吸血鬼という存在はおとぎ話の中の存在とされており、聖女はおじさんのことを「ただの痛い人」扱い。そして、そんなおじさんを社会復帰(?)させるべく、色々な手を出して……。時代が時代なら、吸血鬼に対抗できる人類の希望であったはずの聖女。なぜならば、彼女には、吸血鬼の力を封じる力がある。そのため、吸血鬼がその力を見せようとしても「ただの痛い人」にしか見えない。そして、いくら言っても、認識してくれない聖女に妥協を重ねていって……。この設定が、何よりもうまく機能しているな、と感じる。
基本的に登場人物(?)は、色々とおかしな面々ばかり。聖女は、おじさんを社会復帰させる、というのだけど、どこか抜けており、明らかに爬虫類なのに「犬」と勘違いしてその世話をするように迫る。そして、その犬としておじさんの元に預けられたのは、伝説のドラゴン……なのだけど、なぜか、「かわいさ」を極めようとする。さらに、吸血鬼の下でコウモリが人化した眷属。さらに、聖女に紹介された(本当に)自分を吸血鬼だと言い張る少女と、本当に吸血鬼の血を引く少年。その面々のやりとりが常に行われる。
個人的に好きなのは、眷属関係の話かな? 眷属ということもあり、吸血鬼の僕。でも、見た目は少女なので、聖女からは、子どもか孫としか思われていない。なので、好きな食べ物を果物、虫と聞いてドン引きされたり、はたまた、吸血鬼の眷属だけど、その主の妥協によって変な方向に行くのに呆れたり……。基本、無口でひっそりと、という存在なのだけど、しばしば出てくる本音が可愛い。
まぁ、ショートショート形式で、特に序盤は同じようなやりとりが各エピソードで続いたりして、もうちょっとすっきりしても良いかな? と思ったところはあるんだけど、だんだんと、各キャラクターのやりとりに引き込まれて行った。

No.4902

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