fc2ブログ

(書評)風神雷神 風の章・雷の章

著者:柳広司





京の扇屋・俵屋の養子となった伊年。普段は、ぼーっとしていることも多く、人付き合いも苦手。しかし、ひとたび、「絵」に関することになるとひたすら熱中する、という彼は、俵屋の若旦那、という立場ではあるが、いつまで経っても「ぼん」と呼ばれ、頼りなさが先立つ存在だった。そんなある時、怪しげな男に導かれ、「おくに」という女と出会い……
という感じで粗筋を書いてみたのだけど、本作は、国宝となっている『風神雷神図屏風』の作者として知られる俵屋宗達の生涯を綴った歴史小説……と言えるもの。
著者は、過去、シュリーマンやソクラテス、ダーウィンと言った歴史上の偉人を題材とした作品を書いていた人物。ただ、その中身は、というと、事件が発生してその真相を、というミステリ作品。勿論、その中に当時の時代背景とか、そういうものが大きく横たわっている作品。そんな著者が、謎解き要素のない、文字通りの歴史小説を……それが本書といえよう。
で、その内容は、というとまさしく宗達の出会いの物語、と言った印象。周囲から、「大丈夫か?」と言われながらも、大旦那はそんな彼について甘いことしか言わない。そんな中で、扇についての示唆をくれた出雲阿国。そして、その絵が評判になる中、誘いをかけてきた本阿弥光悦。共に制作に関わる幼馴染たち。さらに、「ぬえ」と呼ばれる腹の底の見えない公家・烏丸光広と出会い、振り回されながらも様々な仕事、作品と出会い……
なんか、この出会いを成長の物語。これ、暦を作った渋川春海の生涯を描いた『天地明察』(冲方丁著)などとも共通しているように思う。確かに、作品を作る、異業を為す。それには本人の力も必要。でも、それだけでなく、周囲の人間関係に恵まれる必要がある。そんなことを強く感じる。そして、そのラストシーン。出雲阿国、妻のみつ、光悦の娘・冴が亡き宗達を語るシーンは特に印象的だった。
もっとも、本作、歴史小説ではあるのだけど、著者による、現代でいえば……的な解説が数多く入る。それはそれで、わかりやすいのだけど、逆に言うと創作とか、そういうものについての宗達の思考とか、そういう部分がかなりアッサリとした印象になっている、という風にも言える。というか、そういう宗達の思考について、極力描かないために、解説などを多く入れているのかな? とも思えるほど。なので、物語の山場ともいえる『風神雷神図屏風』製作とかもあっさりと感じられてしまい、もっと……と思うところも。
こればかりは、好みの問題で、どちらが良いのか、とは一概には言えないのだけど。

No.4906 & No.4907

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。


スポンサーサイト



COMMENT 0