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(書評)霊能者のお値段 お祓いコンサルタント高橋健一事務所

著者:葉山透



幼馴染のスズ姉が何かの霊に取り憑かれてしまった。その除霊のため、お祓いコンサルタント事務所を訪れた高校生・潤に提示された金額はなんと200万円! 「これはビジネスだ」と言う所長・高橋に依頼を断念した潤は、スズ姉と共に霊能番組に出演したのだが、イケメン霊能者・ハルトのミスで、今度は自分が憑かれてしまう。そのハルトによって連れていかれたのは、一度は断念した高橋の事務所で……
という第1話と、なぜか多くの霊が集まるビルを除霊する第2話+αの連作短編形式の物語。
帯には「霊と人の謎を解き明かす」とあり、実際にそれをやっているのは確かなのだけど、何よりも、それぞれのキャラクターの掛け合いが楽しい。あくまでもビジネスだ、という高橋。だから、金を払わないのなら仕事はしない、という態度。確かに、それは冷酷に聞こえるかもしれない。けれども、ちゃんと何にどのくらいの金が掛かるのか。どういう理由で、ということがはっきりしていて、説明を聞いていると法外な金額を吹っかけているわけではない、というのがわかる。でも、そうだとしても……と反発心を抱き、無茶をしてしまう潤。そして、金はあるし、良い人なのだけどトラブルメーカーで、高橋に、という流れを作ってしまうハルト。
全面的に賛成はできないけど、一理ある高橋の物言い。そして、ハルトもまた、それは認めている。潤にしても、立場の違いがあるけど、それぞれ、間違っていることを言っているわけではない。その三者のせめぎあいが常に物語の中にある。でも、それをギスギスした感じにするのではなくて、あくまでもコミカルに進めていくのが、上手さなのだろう。
そんなコミカルなやりとりを中心に展開していく事件なのだけど、笑いどころとかを上手く入れつつ(例えば、第1話で、霊に憑かれてしまった潤を高橋が介抱するのだけど、なぜかお姫様だっことか)、この真相もまた、真剣に突き詰めると息苦しい話だな、と感じる。特に第2話の方は……。愛する娘を想っての行動が、全て裏目に出てしまった。しかも、それを認めたくなく、頑なになっていくオーナーという姿は、見ていて凄く切ない。それまでのコミカルなやりとりだけに、余計にほろ苦さが際立つのかもしれない。
正直なところ、第2話の潤はちょっと鬱陶しい。最早、ただのストーカーというか、そんな感じだし。
でも、コミカルに、手軽に読める筆致ながらも、しっかりと締めるところは締めてくれ、満足度の高い読書時間だった。

No.4913

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