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(書評)真犯人の貌 川口事件調査報告書

著者:前川裕



2008年、八王子市川口町で大量の血痕を残し、教師夫婦が失踪した。遺体なき殺人として始まった捜査では、失踪した夫の兄が逮捕されたものの、裁判では無罪となった。ジャーナリストの杉山は、その無罪判決そのものに疑念を抱き、取材を重ねて……
タイトルに「川口事件調査報告書」とあるように、ちょうど、書籍の内容がノンフィクションの本のような形で綴られていく。
物語は、まず、逮捕されたが無罪となった被害者の兄・達也への疑惑から始まる。無罪は勝ち取った。しかし、その無罪は、アリバイがあった、とか、そういうはっきりと白、というものではなく、証拠不十分というグレーさを孕んだもの。そのため、家族ですら達也が犯人では? と疑っている状態。供述にしても、事件そのものについては不明確ながら、犯行目前の覗き行為については真実味がある、というので余計に。その一方で、被害者夫婦に関する疑惑。さらに、「自分が犯人だ」と吹聴している不良グループの存在も……。その中で、杉山が疑うのは、達也の単独犯行ではなければ? というもの。
事件そのものもそうなのだけど、達也の弁護を担当した弁護士との対決。さらに、雑誌の記述に対するクレーム。編集者とのあれこれ、など取材に関する様々な事象。そして、そうやって取材が遅くなるうちに起こる関係者の不審な死。事態の進展。しかし、それでも関係者がなぜ協力していたのか、というのはわからないまま。そして、ようやく、事件を繋ぐ存在が見えてくるが……
真相についての、「おそらくこうだろう」というのは見えつつも、しかし、なぜそこまで、その人物が結びつけたのか? とか、その辺りを巡ってスッキリしない、というのもノンフィクションの事件ルポっぽい。著者の作品って、はっきりと犯人がこの人物で、こういう動機で、こういう風に事件を、というのが完全に明らかになって、という作品は少ないのだけど、本作もそのタイプ。そして、そういう見方によっては欠点になる部分を、ノンフィクション作品というような形で描くことにより補っている、というのは間違いないだろう。
そういう部分も含めて、著者らしい作品という風に感じる。

No.4919

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