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(書評)顔の見えない僕と嘘つきな君の恋

著者:望月拓海



12歳の頃に負った怪我により、人の顔を識別できなくなってしまった達也。引き取った叔父が行う窃盗の手伝いをして過ごすある日、達也はふと出会った占い師から「君は運命の女性とである。4回。しかし、隠された真実に気づかないと結ばれない」と告げられる。果たして、直後、窃盗の準備のために接近した少女・和花にだんだんと惹かれていって……
物語は、15歳の達也から始まって、20歳、25歳……という時系列で出会いを体験する形で綴られていく。
プロローグから、挑戦状的な煽りが入っており、どうしても、その部分を意識して読むことになるわけだけど……それ自体が一つのミスリードとでも言うべきものになっているんだろう。
とりあえず、そこはさておいて、の達也の物語。粗筋でも書いたように、人の顔を識別できない、という障害を負っている達也。ずっとやってきたサッカーは、そのせいで出来なくなり、犯罪者である叔父が言うように「分相応」な生き方をする日々。そんなときに出会ったのが、歌手を目指している、という和花。夢を、という彼女の言葉は、達也にとって、目からうろこ、とでも言うようなもの。しかし、盗みの手伝いをせず、うつつを抜かしていることで……
それから5年後。叔父の元を離れ、妹と東京で暮らす達也。しかし、妹を大学に行かせるため、悪女をだます、という詐欺師としての日々を送っていた。その標的としたのが、晶という女性で……。なんか、どん底にあった15歳。相変わらず、犯罪者ではあるが、しかし、自分の目的のためにそれをするようになった20歳。さらに一歩進んで……。この辺り、達也が惹かれる、というのは、勿論、相手が魅力的だから、というのもあるのだけど、それ以上に「変わるきっかけ」となる、ということが大きいのだろう。そして、それこそが、「運命」なのだろうとも思う。
という感じである程度、パターンが決まった形で繰り返されていく出会い。達也の体質があるので、ある程度、「こうかな?」と予想できるところがあり、事実として、というのはる。ただ、それは冒頭の煽りなどもあって、まず、そこへ導かれている、ということになる。そして、「やっぱり……」と思ったところから……
読了後の感想としては前作と似たようなところはある。でも、遺された想いとか、そういうものが非常に優しくて、これも一つの愛の形なのだろう、というのを強く思う。ミステリとしての仕掛けが、最終的には恋の話へと結びつく。その捻り方も見事だった。

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