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(書評)道化か毒か錬金術

著者:水城正太郎



帝都を騒がせる錬金術師「アナーキー・アルケミスト」。類稀なる才能と、それを悪戯にしか使わない、ということで話題になる彼から、重要人物であり、変わり者でもあると評判のアルト・ブロイ公爵に対し殺害予告が届けられる。帝国情報部のイングリドは、アルトの警護のため、ブロイ公国を訪れるのだが……
あとがきで、かなり自由な感じに書いた、とあるようになかなか掴みどころのない作品。
物語の中心となるのは、アルトとイングリドなのだけど、立ち位置的にアルトは、常にふざけている、というかそういう役回り。そして、イングリドはそれに巻き込まれて……という役回りで、どちらかというと読者の共感を得るような役回り……なのだけど、ただ、女性なのに、女性好きで、かわいい娘を見つけるとすぐにお持ち帰り、という性癖の持ち主でもある。冒頭に書いた形でアルトの元へ護衛に入り、多少の紆余曲折あってその夜のはメイドとベッドを共にしている、というなかなかの手の速さ。その後も、結構、そういう面での活躍が多いし(笑)
てな感じで、作中、かなりギャグというか、見方によっては悪ノリとも取れるような行動をしながら、トラブルを解決していく連作短編形式。
一応、ネタバレになってしまうけど、帯でわかると思うので書くと、1編目は実はアルト=アナーキー・アルケミストというのが判明する話で、実は暗殺云々の予告は身中の裏切り者を暴き出す、というのをそこまでのギャグ多めの話から展開。逆に2編目は、完全に悪ノリなところこから、それがテロ扱いへ……という話。そして、3編目は実は、あまりギャグがなくシリアスな話というような形に。
好きなのは、2編目かな。美食を極めた結果、変な所へとたどり着いた人々の食事会。そこで絶賛されたのは、美少女が作った、しかし、壊滅的にマズい料理。あまりにも不味いと周囲に進めたくなる(自分だけ被害者になりたくない)というやりとり、そして、自分の料理に対する率直な評価を聞いた少女の絶望。そもそも、自分の娘を愛しながら、その不味さを世に広めたかった、という父親のひねくれた状況とか、そういうのを考えていると、それだけで笑えてきて楽しかった。
その点でいうと、3編目はアルトが表向きは劇団。けれども、座長であるコレットの下、暗殺者集団となっているものを調査に行く、という話はおふざけとかが控えめでちょっとカラーが異なる印象。勿論、その中でのやりとりとかは緊迫感があるし、本物の悪魔が絡んできての話の決着部分のある意味での拍子抜けさ、みたいなところは作品のカラーにあっているとも思うのだけど。
まぁともかく、キャラクターがかなり濃く、一見、作中の部隊であるように海外のコメディ的なノリが強い作品。ただ、その一方で、そのキャラクターの使い方次第でいろいろな方向性へ進むことができるんだな、という可能性の広さも感じさせてくれた。それだけに、話を作るのは大変そうな気がするのだけど、続編が出たら読みたいな、と思えた。

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