FC2ブログ

(書評)僕と死神の七日間

著者:蘇之一行



「私は死神。あと七日で死ぬことを君に伝えに来たの」 塾の帰り道に出会った少女は、僕にしか見えない少女は、自分が死神だと名乗った。頑張ったところで意味なんてない。僕にとってのヒーローであった兄の死後、僕は生きる意味を見いだせずにいた。それがあと七日しかないとして、だから何だというのだ。そんな僕に、彼女は一緒にとびっきりのなのかを過ごそうと提案してきて……
うん、面白かった。
死神が見える、というのは、間もなく死を迎える、という存在。そして、未練が残っている場合、成仏することが出来ず、幽霊としてこの世に残り続けることになる。だからこそ……それを残さないために……
というのだけど、死神の少女の様子は、明らかに僕の後悔をなくすため……ではなくて、自分が楽しんでいるようにしか思えない。頭に浮かぶのは、本当に「死神」か? という疑問。でも、そんな彼女の様子を見ていて和むのも確か。
そもそも「僕」がこうなったのは、兄の死。医学部に進学し、研修医として日々を過ごす中で事故死した兄。兄に期待していた父の心は砕け、そんな兄の代わりに、と努力をした僕、しかし、いくら勉強をしても成績は伸びず、受験にすら失敗。父は僕を見なくなり、僕もまた、自分なんて……というあきらめに達してしまった。生きているのか死んでいるのかわからない。だから、未練なんてない。まぁ、あるとすれば、幼いころから一緒にいた愛犬のハナが悲しむかな? ということ。だから、死神が現れたから、と言っても……
そんな中で、そのハナが……。そして、それをきっかけに……
主人公の「僕」の味わった絶望。でも、この話、見方を変えると、親は親で、という部分があるんだよね。その辺りがしっかりと感じられるのが良いところかな? と感じる。「僕」視点で見たとき、確かに父の態度は……と思うところがある。しかし、そもそも、父だって傷ついている。そして、兄と弟を比べてしまう。してはいけないとわかっていても……。だからこそ、真正面に向いてやれなかった。ただ事務的に反応するしかなかった。これ以上、失いたくなかったから……
物語の流れとかは、ある程度、予測できる部分はあるんだけど、予想通りだからこその死神との別れ。兄の遺した想い。そういうものが詰まっているんだろう。ハッピーエンドだけど、ちょっと悲しい。そんな凄くきれいな物語を読んだな、という読後感が残った。

No.4944

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。


スポンサーサイト



COMMENT 0