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(書評)月とライカと吸血姫4

著者:牧野圭祐



宇宙開発が行き詰まる中で開催されることとなった万国博覧会。広報を務めることとなったバートとカイエは、「宇宙の平和利用に関するカンファレンス」への参加を要請される。そして、その場には、共和国の英雄2人も急遽、参加することに。憧れの2人との対面や近未来的なパビリオンに興奮する中で起きたのは……
3巻に続いて王国側のバート、カイエ視点で綴られる物語。これまでのエピソードと違い、今回は、直接的に宇宙開発とかについてのアレコレがあるわけではなく、その周囲という印象の物語。冒頭の粗筋で描いたように、物語としては、万国博の中でのものが中心に。
とりあえず言えるのは、バートとカイエが既にバカップルみたいな状態になっているな、おい! ってこと(笑) 広報の仕事、という建前で万博に参加し、様々なパビリオンを回る二人。明らかに楽しむ気満々だし、その中でのやりとりは……。ただ、その一方で、国際的には対立している共和国側のレフ、イリナも一緒に。敵対する陣営、ということもあり、色々な印象を持っていた二人であるが、しかし、実際に目の当たりにすれば、彼らもまた、自分たちと年齢などが変わらない、ごくごく普通の存在。運び屋(監視役)の手前、踏み込んだアレコレはやれないものの、彼らとならば……。そんな想いを抱いた矢先の共和国によるミサイル基地建設に伴う国際危機の勃発……
後書きでも書かれているように、1962年当時をモチーフとしての物語。東西冷戦というと、どうしても両陣営がひっそりとアレコレという印象があるんだけど、外部へ出る存在はちゃんといたし、そこでの交流があった。でも、同時に外部を知るからこそ、彼らは国の思惑に翻弄される。そんな雰囲気が凄く伝わってくる。今回は、バート側の視点なだけに、王国の宇宙開発を巡っての派閥争いとか、そういうのも出てきて、ということになるんだけど、これはレフ側の視点でもあるだろうし……
そんな中での、危機的状況を逆手にとって、新たな提案をしていくバート、カイエの強かさはまさに痛快。さらに、あくまでも「お飾り」であった王女・サンダンシアが、やはりバートたちの言葉から、禁忌を破っての演説をする辺りも良い。あくまでも一技術者の想いが、国際舞台に、というのにこういう存在は不可欠だし、ちゃんとそこまでの過程をしっかりと描いているから、違和感なく入れるんだよな。
宇宙開発そのものを巡る話ではないのだけど、でも、やっぱり丁寧な話の進め方に引き込まれた。

No.4950

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