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(書評)到達不能局

著者:斉藤詠一



2018年2月。南極を遊覧飛行中のチャーター機が突如、システムダウンを起こし不時着する。大伯父が参加している、という理由で、旅に同行していたツアーコンダクターの望月拓海は、なぜか乗客のベイカーという男に連れられ、旧ソ連の、今は機能していない基地を目指すことに。一方、1945年、マレーシア・ペナン島に滞在していた訓練生の星野信之は、ドイツから来た科学者と、その娘・ロッテを輸送する命令を受けて……
第64回江戸川乱歩賞受賞作。
なんか、ミステリーというよりも、SF……というか、(別に低く見積もるつもりはないが)ライトノベルを読んでいる気分になった。
物語は、現代を舞台とした望月。時を同じくして、何かおかしなことが起きていることを察知する観測隊の面々。そして、戦時中の星野という3つの視点で綴られていく。サバイバル状態になった望月だが、その前に現れるベイカーの不可解な行動。そこで見え隠れする大伯父の存在。一方、南極観測隊が感じるのは「何かおかしい」という漠然とした違和感。それを結びつける戦時中の物語。
ミステリーと言っても、犯人は誰なのか? トリックは? というようなタイプの作品ではなく、冒険小説とか、そういうタイプの話と言えるだろう。そして、それが結びついたときに明らかになるのは……
巻末の選評では「SF要素が……」という言葉があるのだけど、SFと言えばSFだけど、個人的には一種の現代ファンタジーのように感じた。そもそも、ロッテの存在が特殊能力みたいなものだし、また、ある設備を使っての仕組み、というのが……。純粋にSFとして考えると、ちょっと……というところはあるのだろう。ただ、逆にそれが、SFテイストのあるライトノベル作品っぽい感じで、何かなじみのある作風だな、と感じた、というわけだ。
そもそも、登場人物が、それぞれ常に冷静沈着だし、そもそも不時着した飛行機の乗客たちはどうした? とか、現実的に考えると「?」という部分は数多くある。そういう意味で、特に、現実的な方向性での作品を期待していると酷評というのも当然にあると思う。
ただ、言い換えれば、ファンタジー方向に振り切った作品ともいえるわけで、現実的なリアリティとかを排除して、純粋なエンタメ作品だ、とすればこれはこれでアリではなかろうか。

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