FC2ブログ

(書評)叙述トリック短編集

著者:似鳥鶏



よく「叙述トリックはアンフェア」と呼ばれる。それが叙述トリックの泣き所と言われる。では、アンフェアではなくなる方法はないのだろうか? ということで、「叙述トリック」が使われていることを明記した短編集。
全6編を収録。
なんていうか、叙述トリックって何だろう? という気分になった(笑) とりあえず言えることは、それぞれのエピソードって、それぞれ「事件(?)」が起きて、それを解決する形なのだけど、そこに叙述トリックが仕掛けられていて、という形。
叙述トリックが大きな意味を持っているのは1編目。2編目辺りだろうか? 1編目『ちゃんと流す神様』。女子トイレが詰まってしまった。しかし、業者を呼ぼうとして、しばらくするとなぜかそれは解消されていた。場所的に、トイレに出入りできたのは、そのことを発見した総務課の面々のみ。しかし、それぞれにアリバイがあって……
それぞれの行動などから、アリバイを考えて……で、探偵役の別紙が明らかにした真相は……。勿論、アリバイについてのあれこれとかも面白いのだけど、そこから出来るのは叙述トリックによって明らかだった、というのは「なるほどな」という感じ。また、2編目については、導入部たる「挑戦状」で説明されたトリックがしっかりと活きているのが好印象。
ただ、3編目以降は、色々と……という感じ。3編目『閉じられた三人と二人』は、そもそも「トリック」なのか? という感じだし、5編目の『貧乏荘の怪事件』は叙述トリックと言って良いのかどうか……(まぁ、普通、そこまで気にしないよね、というのはあるが) そんな中で、結構好きなのは4編目の『なんとなく買った本の結末』。作中作である事件のトリックは何か? というやりとりをする話なのだけど、別紙さんにその本について語った私は、読み始めたところで分かったという。それは? 小説とかを読んでいると、時代背景とか、そういうものを感じることがある。それは、その中身の文章だけでなくて……。この辺りの処理の仕方が面白いな、と感じた1編。
でもって、6編目。探偵事務所を営む別紙さんの下で働く私。事務所に入った依頼は、元大物議員から、愉快犯と言える犯罪者を捕まえてくれ、というもの。別紙さんはある情報筋から、駅に設置されている巨大なコケシがターゲットにされる、ということで、そこをマークすることにしたのだが、出入口を監視していたのにイタズラは起きてしまって……
ある意味、ここまでの5編は、この話のための伏線と言える。詳しくは言わないけど、そこまでのキャラクター描写というのが実は非常に大きな意味を持っていて、なおかつ物凄くバカバカしいトリック。
タイトルのように叙述トリックがメインではあるが、同時にバカミス臭も強い。ただ、それでもしっかりと本格ミステリとして考えられている。そのバランスが何よりも印象に残る作品集といえよう。

No.4948

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0