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(書評)スーパーカブ4

著者:トネ・コーケン



卒業も近づく高3の冬。年末年始を前に浮き立つ世間をよそに、小熊は一人、冬休みを迎えようとしていた。新しい生活を前に、金を稼ぎたい小熊の前に、彼女をヘッドハンディングしたい、というバイク便会社の社長・浮谷が現れ……
なんか、3巻で一区切りがついたような感じがしていた中で刊行された4巻。それだけに、ちょっと毛色が変わったかな? と。
まずは、小熊をヘッドハンティングした浮谷の下でのバイク便ライダーとしての生活。バイクそのものは、それまでのカブとは違ったVTR。そして、そのライダーの面々。
元々、コミュニケーションについては、不安のあった小熊。だからこそ、決められた場所を移動して、荷物を運ぶ従来の仕事から、というのにも不安があった。しかし、やっていることは、それほど変わらない。そして、何よりもバイク便ライダーの面々とのやり取り。それぞれ、個性的、というか、決して周囲に打ち解けて……という人々ではない。しかし、それぞれに持ち味があり、それを活かした形で仕事をしている。特に、社長であり、現場にも出る浮谷。金持ちの子息である、というが、しかし、それほど熱心とも思えないものの、しっかりと社長業をこなす彼女。そんな彼女との奇妙な関係。これ、自分も社会に出て、「ああ、こういう形でも良いのか」とか、そういう風に思ったことは多々あるのだけど、それを浮谷の人物像で上手く描いているように感じる。
中盤は、慧海の紹介で出会った少女・史。まさしく、生きることに興味がない、という印象の彼女。そんな彼女の家にあったバイクを修理して、彼女が乗れるようにするが……。スタート時点でのアレコレは確かに色々と違う。でも、一方で、何もできない、とか、そういう諦観が、という部分について、小熊と史は似ている部分も多い。でも、小熊は、かなり醒めた視線を史へと送る。自分はバイクについて全く詳しくないのだけど、何か、何かを始めて、ある程度、知識もついてきて、その中で初心者に出会ったとき……。一種の初心者への侮蔑……とまではいかないにせよ、変な自意識みたいなものを感じる描写が目立った。これ、バイクに限らず、色々なものについて言えることなんじゃないか、という気がする。
終盤、小熊がよくいくバイクショップ店員の事情とか、ボランティアとかも見どころなのだろうけど。著者があとがきで書いている「人間関係」というテーマでいうと、中盤までのエピソードの印象が強く残った。その上で、先に書いた、毛色が変わった、というのは、その部分なのだろう、とも。
つまり、これまでのエピソードは小熊がバイクに出会い、そこに楽しみを見出し、そして、人生の選択も含めた色々を経験していく、というものだった。それが、今度は……。この言い方があっているのかどうかはわからないが、それまでの「初心者の視点」から、「中級者以上の視点」に切り替わったから、なのかな? という感じがしてならない。

No.4961

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