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(書評)夏を取り戻す

著者:岡崎琢磨



1996年秋。ゴシップ雑誌である『月刊ウラガワ』に、ある団地で子供が失踪してしまう、という事件が起きているという匿名の投書が届く。入社したばかりの記者・猿渡は、フリーライターである佐々木の助手として、その事件について調べることとなって……
うん、面白かった。
物語は、当初、子供たちはどうやって失踪したのか? という謎解きから始まっている。川に囲まれ、出入り口が極端に少ない団地。失踪した子供は、そこから出ていく姿を最後に目撃した者がいない。大人たちは、当然、団地の外を探したものの、見つからないまま、1週間後、元気なまま戻ってきた。一体、彼はどこに? さらに、学校の視聴覚室から消えた少女。それはどうやって?
当初から、子供たちが、自分たちで事件を起こしていることがわかっており、その意味では、子供たちと佐々木・猿渡の知恵比べ、という形。しかし、わからないのは、なぜ、子供たちはそのようなことを起こしているのか? ということ。知恵比べの中で明らかになっていくのは、その団地を含めた地域の人間関係。さらに、失踪した子供たちの学校で起きたある事件。ただでさえあった、地域の問題が、それによって悪化しつつあった。だが、それを逆手にとって……。新興住宅地と、従来からの住人の間の壁とか、そういうのは色々と問題になっているけど、こういうこともある得るのかな? とも思う。
ある意味では、綺麗過ぎるまとめかたかな? という形で決着しつつあって、しかし、それだけでは収まらなかった思い。ちょっと苦い結末ではあるけど、だからこそ心に残る結末になっている。なんていうか、綺麗にまとめました、という大人の側の思惑だけじゃ実は解決しない、っていうのは間違いないだろうし。その辺りの心情にリアリティを感じる。
これまで読んだ著者の作品でもベスト級の出来じゃないだろうか。

No.4963

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