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(書評)宝島 HERO’S ISLAND

著者:真藤順丈



日本の最前線として地上戦を経験し、アメリカに蹂躙された沖縄。米軍基地から資材を盗み、英雄と言われたオンちゃん。しかし、嘉手納基地へ乗り込んだ彼は戻ってこなかった。「英雄」を失った沖縄。オンちゃんの親友・グスク。弟・リク。オンちゃんに思いを寄せるヤマコ。3人の二十年にわたる物語。
登場人物たちの一代記。そして、その背景には、現実の歴史の流れが……。その作風は、『墓頭』に似ているかな? と、ただ、ひたすらバイオレンスな物語であった『墓頭』とは異なり、オンちゃんの行方。そして、歴史の中で流されながらも、自らの進む先を目指し、もがいていく3人の姿が印象的だった。
嘉手納基地へ侵入した中、思わぬ形でオンちゃんと離れてしまったグスク、リク、そして、ヤマコ。多くの仲間を喪った侵入。しかし、捕縛された、死去した。他の者たちは、そんな情報がハッキリしている。しかし、そんな情報がない、ということは、オンちゃんはどこかで……。3人は、それぞれにオンちゃんを求め、彼を探ることにして……
なんていうか、この物語の主題は「オンちゃんはどこに?」という部分でありながらも、戦後・沖縄の激動の歴史に翻弄されていく様が物凄く読ませる。
警察官になったグスク。勿論、その目的は、オンちゃんを探すこと。しかし、度重なる米兵による事件の捜査に忙しく、調査は父として進まない。そんな中、米国の情報機関とのチャンネルも作ることになるが……。一方のリクは、地下組織ともいえる暴力団(的)組織へ。そして、ヤマコは教師となって……
そもそも、日本本土とは違い、「琉球」として独立した国であった沖縄。そして、唯一の地上戦の舞台でもあり、戦後は本土から切り離されてしまった。アメリカ兵による事件は引きを切らず、しかも、警察といえども十分な捜査が出来ない理不尽。その状況の中だからこそ、理想を追い求める者。英雄と同じような存在になりたい者……。オンちゃんを、という目的は同じであるが、少しずつ、それぞれの進む道は異なっていき、別れを迎えることに。決して、対立しているわけではないし、信頼もしていたのに、でも……という寂しさ。でも、そうなるのも、と納得できるそれぞれを巡る世情。この辺りの状況は、この設定、この人物だからこそ描けたものではないかと思う。
自分自身、沖縄の歴史とかに詳しいとはいいがたい。本当に、軽~い概要を知っているだけ。でも、本土と比べて特殊な事情を持っている沖縄という土地だからこそ、政治などにおいても独特の存在感を示しているんだ、というのは肌で感じられる。エンタメ作品である、ということは間違いないのだけど、でも……。そんな感じなのだ。
そして、その物語の結末。一度は離れになった3人。それを結びつけたのもまた、オンちゃんだった。そして、そのオンちゃんは、どこにいたのか? 悔いは残る。でも、確かに、遺してくれたものが、絆を戻してくれた。政治的に、決して問題も解決していない。でも、何かは残った。そんな余韻を感じた。

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