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(書評)噛みあわない会話と、ある過去について

著者:辻村深月



過去のことについて会話をする、という形で綴られる短編集。全4編を収録。
著者の作品っていうと、イジメとか、そういうものを匂わせる作品が多いのだけど、本作もその系統。「イジメ」というと言いすぎだけど、ある種の自覚なき悪意のようなものを感じさせるエピソード集と言えそう。
1編目『ナベちゃんのヨメ』。大学時代、同じサークルの仲間であったナベちゃんこと、渡辺が結婚するらしい。でも、その相手は、教授にストーカー行為を働いて退学になった女性? もちろん、ナベちゃんも、そのことは知っている。なのに? というのを、サークルのメンバー2人のやり取りとして語る。
大学時代、女性たちの「相談相手」として、男女の分け隔てなくやりとりをしていたナベちゃん。そういう意味で、嫌っていたわけでもない。でも、その接し方は「友達」であり、それ以上にはなかった。勿論、ナベちゃんも男であり、彼が女性と付き合いたいと思っていたことも、サークル仲間に想いを寄せていることも知っていた。しかし、それは黙殺してきた。それを考えれば……
「共依存」とか、そういう言い方も出来るかもしれない。でも、それをバカにする資格は自分たちにあるのか? そんな結末が印象的。
個人的に、一番共感したのは、『ママ・はは』かな?
教育熱心な母親の存在にどうしたものか、と思っている私は、同僚のスミちゃんに相談をする。すると、スミちゃんは、自分の過去について話しだして……
教育熱心というか、とにかく「自分がこうだ」と思ったことが全て正しい。子供も、価値観が一緒だと思っている親。決して、何もしない、というわけではないし、人並み以上の生活もさせてくれている。しかし、「楽しむ」というのが悪だと思っているかのような言動。毎年、家族旅行に行くけど、それすら義務のようにしか思えない行動。そして、大学に進学し、ようやく解放されたと思ったけど……。そんな思いを決定的にした成人式の振袖……
自分の親が、そこまで極端というわけではないのだけど、でも、例えば、子供の進路が地元に帰って……というのが当然だと思っていた、なんていうのはあるし、また、それを前提にした「プレゼント」とかを出してきて……とか、そういうのを思い出す。前にも書いたけど、この辺り、著者が山梨出身で、とか、そういうのも大きいのかな? というのを感じる。ただ、ちょっと締め方はファンタジーみたいな感じになって「?」というのもあったけど。
短編。それも40頁~60頁くらいの分量ではあるのだけど、グサっと来るものをそれぞれ備えた作品集だと思う。

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