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魔力の胎動

著者:東野圭吾



スポーツ選手らが多く通う鍼灸院の院長・ナユタの元を一人の少女が訪れる。不思議な雰囲気を纏ったその少女・円華は、ちょうど、診療中のスキー選手・坂屋の状態を一発で言い当てて……(『あの風に向かって翔べ』)
『ラプラスの魔女』の前日譚エピソードを収録した連作短編集。
前作、というか『ラプラスの魔女』は、円華が様々なことを予知する能力を持っていて……と言いつつも、それが読者とすれば本当なのか? というような疑念を抱き、さらに不可解な死を遂げた人々のミッシングリンクは何なのか? という謎に引き付けられたのだけど、後半は超能力バトルみたいになってしまって……という感じだった。
ひるがえって、本作の場合、読者とすれば、円華の能力については知っている状態で、その能力をどういう形で活かすのか? というのを楽しむような形の話に仕上がっている。
例えば1編目。ベテランのスキージャンパーとして活躍してきたが、故障などもあり成績が伸び悩む坂屋。すっかり弱気になった彼の弱点を見抜いた円華だったが、風を読む、という予知の能力で……。スキージャンプにとって、どうしても大事なのが、風が味方になるかどうか? という点。2本のジャンプのうち、最初のジャンプはその能力で。しかし、2本目はタイミングが最悪。そのとき、円華が行ったのは……。謎解きとか、そういうものはないのだけど、ほっこりとした誤読間の安定感は流石。
むしろ、謎解きとしても見ごたえがあったのは、4編目『どの道で迷っていようとも』。同性愛者であったことを告白した盲目のミュージシャン・朝比奈と、彼のパートナーであるサム。しかし、その直後にサムは、山で不可解な死を遂げた。警察は、自殺として処理したが、朝比奈は、自分のカミングアウトが原因と思い悩んでいて……
サムが死んだ山での行動。彼が残した様々なデータ。朝比奈が受けていた依頼。そして、サムが死んだ場所では……
最終的には、円華の能力が……ということになるのだけど、そこまでの部分での諸々を組み合わせていくので、しっかりとミステリとして成立している辺りが流石。そのあと、実は……というのは、ひっくり返しとして……と、同時にそこで終わりなの? という感じがする部分はあったのだけど。
ちなみに、5編目の表題作については……本当に『ラプラスの魔女』の前日譚というか、プロローグという感じで単独の物語としては……という感じ。

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