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すみれ屋敷の罪人

著者:降田天



2001年、長らく手付かずだった戦前の名家・旧柴峰邸の敷地から発見された2つの白骨遺体。すみれの花で彩られた美しい館に暮らす一族。投手の太一郎と3人の娘たち。4人は、終戦直前の空襲により死亡したとされている。とすれば、その遺体は一体、誰なのか?
物語は、当時、柴峰で働いていた面々の証言を聞く、という形で進んでいく。当時、柴峰家の人びとはどのような暮らしをしていたのか? そして、最大の謎である「白骨遺体は誰のものなのか?」という部分へ迫っていく。
当時の柴峰家の一族は、上に書いた通り。どちらかというと派手好きな長女・葵。地味だが、美しさを感じさせる次女・桜。天真爛漫さで愛された三女・茜。そして、そんな三姉妹たち、そこに従う者たちの人間関係……。
それぞれの証言者は、三姉妹のそれぞれと近しい立場にあり、その立場故に食い違う、それぞれの印象。しかし、それ以上に明らかになっていくそれぞれの立場の違い。また、怪しげな新人従者・ヒナの存在。さらに、その証言者にも、それぞれ抱えている秘密がある。その中から、一体、何が正しいのか……
それぞれの章で、それぞれの証言者の抱えている秘密、嘘を暴露する、という形であるため、連作短編のような形で進展する。ただ、その中で、探偵役である西ノ森自身も一体、何者なのか? という謎が出てくる。
物語として、何よりも思うのは、どこへと進むのかがわからない、というところだろうか。上に書いたように、そもそもの証言者自身も主観だけでなく、嘘をついている部分があるなど、どこまで信頼できるのかわからない。そして、調査をする探偵役もまた……。そんな中で、探偵役たる西ノ森の正体が明らかになり、一気に明らかに……
どちらかというと、ひっくり返しというよりも、物語がどこへ進むのか? という作中での「捻り」の連続に惹かれた、という印象だろうか。何というか、ちょっとした捻りの中で、パズルが完成していく様を見る、というか、そんな感じ。ちょっと地味かも知れない。でも、ストーリーテーリングの巧みさ、というのは確かにある。

No.5004

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