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そこにいるのに

著者:似鳥鶏



ホラー風味の13編を収録した短編集。数ページ程度のショートショートから、50頁くらいの短編作品まで分量は色々。そして……注釈も後書きもない!
1編目『六年前の日記』。六年前、娘を強盗に殺害された母親の元へ取材に訪れた「わたし」。事件は犯人が捕まらないままに迷宮入りし、母親はいまだにその傷から回復出来ていない。そんな母親に話を聞き、亡き娘の日記を拝見するのだが……。ほんとうにごく普通の小学生の日々が綴られた日記。その最後に……。ちょっとした違和感から、そこを暴いたとき……。「なぜ?」とか、そういう部分は残る。十数頁の分量なのだけど、そのショッキングな最後が印象的。
同じくショートショート形式で印象的なのが『陸橋のあたりから』。母親と祖父の家に遊びに行ったぼく。しかし、その帰り道の新幹線で、「こわいひと」に出会った。でも、周囲の大人たちは、その人に気づいていない。そして……。何か、不気味なものが……というパターンの話が多いのだけど、ショーショート形式だからこそのシンプルさ故のインパクトが見事。
そんな中で異色なのは、『帰り道の子供』。長年、蕎麦屋でパートをしている私。何が、っていうことはあるが、どんなに忙しくても、明るい笑顔で声掛けをすることだけは心掛けている。そんなある日、ひどく疲れた顔をした人が訪れた。その帰り道、暗い道で出会った不思議な子供は、「七人目」と言ってきて……。七人目、とは? そして、その後も増えていく人数……。作品集のカラーからして、ネガティヴなこと? と思わせて……。このエピソードの構成もあってのものだろう。
先にも書いた通り、結構、何だかよくわからないが、とんでもないものがいて、それが迫って……というパターンの話が多くて、ちょっと「また?」と思ったりした部分も無きにしも非ず。その点はちょっとマイナスかも知れない。でも、テンポの良さとか、そういうもので読ませる力がある、というのは確か。
というか、最後のエピソード『視えないのにそこにいる』は、それをある意味、徹底的にやりすぎて、どちらかというとファンタジーみたいになっている、とも感じた。

No.5012

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