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焦土の鷲 イエロー・イーグル

著者:五條瑛



太平洋戦争が終わり、GHQの統治下にはいった日本。日系アメリカ人であるリオンは、日本の共産化を防ぐための諜報活動をすべく、巣鴨プリズンに収監された者たちに接触していく。一方、歌舞伎役者である紀上辰三郎は、弟弟子・香也に連れられ、東京へと戻る。しかし、そこで目の当たりにしたのは、民間情報局CIEにより、歌舞伎が存続の危機にある、という現状だった……
著者の作品を読むのは、相当に久々。
著者の作品って、諜報活動とか、そういう題材をよく扱っており、本作も題材としてはその部分がある。あるんだけど……何か、カラーが違うような……
勿論、物語の根底にあるのは、GHQ占領下での、日本の方向性を巡っての東西両陣営の対立。ソ連が主導する社会主義化、共産主義化の動きと、それを防ごうとするリオンら、アメリカ側の動き。GHQと言っても一枚岩ではなく、東西両陣営が、それぞれに都合の良いように日本を変えたい、という想いを抱いている。その中で、日本の伝統文化とか、そういうものをどう扱うのか、という部分が前面に。
その中で浮かび上がってくるのは、辰三郎の存在感。出征していて、その時から彼の中にあったのは「芝居がしたい」という想い。しかし、帰国して知ったのは、その歌舞伎が危機にある、ということ。そのために、GHQに伝手を……とリオンに接触していく。
物語の中心にあるのは、リオンの動きであり、出征していた時代、辰三郎が秘かに追っていた任務は? というものではある。でも、それよりも、辰三郎の、芝居がしたい、という部分だろう。当初から、そんな雰囲気があるが、彼を慕う弟弟子・香也が抱えているもの。そして、そんな香也が、辰三郎に、というのが明らかになっていき、どんどんその部分が強く押し出されていく。香也があまりに健気で、っていうのも大きいのだけど、読んでいて応援してくる。リオンが、「自分が掌で転がしているつもりだけど、自分が転がされているようだ」というようなセリフを言う場面があるのだけど、まさにそんな感じ。
そういうこともあって、謀略小説……ではあるのだけど、辰三郎、香也の、歌舞伎をしたいという想い。それは、ある意味、戦時中の表現が規制された時代から、自由の時代へ、という中で、しかし、存在していた規制と戦って自分たちの自由を、という想いを綴った物語なのかな? と思う。

No.5016

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