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介護士K

著者:久坂部羊



介護施設「アミカル蒲田」で入居者の転落死亡事故が発生。以前、介護士による虐待が発覚し、その事件について取材したことのあるジャーナリストの美和は、第一発見者がそのときに取材した小柳であることを知る。「長生きで苦しんでいる人は早く死なせてあげた方がいい」という想いを抱く小柳について調べる中、小柳について様々な噂があることを知り……
結局、小柳とはいったい、何者だったのか? そんな思いが読了後に出てくる。
物語は、美和、小柳の視点を中心に展開。テーマとしては、介護問題。長生きをしたい、とは言う。でも、年を取って、身体が動かなくなっていく。回復の見込みはなく、苦しみが続くのみ。それでも? 一方で、どんどん増えていく高齢者。その中で、介護をする側は人手不足になり、金にも限りがある中、報酬は安くならざるを得ない。まぁ、この部分については、著者の過去の作品でも散々出てきた話なので、その点についてはいつも通り、という感じ。
その中でクローズアップされるのは、先にも書いたように、小柳とはいったい、何だったのか? という部分。
高校を中退したものの、高卒認定を取得。現在は、介護施設で働きながら、大学の医学部を目指している真面目な青年。そんな印象で語られるが、その一方で、「死なせてあげるべき」という思想を持っていたり、はたまた、周囲に意味もない嘘をつく虚言壁の持ち主だ、とも言われる。さらに、高校時代にも色々と噂があって……。第一発見者で、と、怪しい部分はあるが、しかし、彼は本当に老人を殺害したのか? それとも? 次々と起こる高齢者の不審死。その中で、美和は、小柳に話を聞き、介護についての意識も変わっていき……
この小柳がどちらなのか? そして、怪しいとは思いつつも、しかし、考え方に一理あると美和が考えるようになっていく過程は読者の意識とリンクしていると思うし、その中で振り回される、というのも。小柳に騙されているのではないか? でも……。小柳の存在を巡って、揺れ動かされていくスリリングさというのが何よりも面白い。そして、一応の決着がついた、と思いきや……のオチ。
介護についての問題提起について、私自身は著者の過去の作品を読んだことがあるので、今回も、という感じではあるが、初めて読む方には「確かに」と思わせる部分はきっとある。その上で、小柳について、どちらに転がるかわからないモヤモヤ感に引きずられる。読み終わっても、モヤモヤ感は収まることがないのだけど、それは、介護の問題、という部分もまた、同じだからではないか、という気がする。

No.5018

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