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ネクスト・ギグ

著者:鵜林伸也



逆行を浴び、ステージへ上がったボーカルは、悲痛な叫びをあげると、その場に崩れ落ちた。彼の胸には、千枚通しが。衆人環視の状況で起きた事件により、ロックバンド「赤い青」は活動休止に。「赤い青」の活動拠点であり、事件現場となったライブハウスのスタッフ・梨佳は、事件について調べ始めるのだが……
最初に物語の設定を説明しておくと、かつて、短い期間だけ活動をし、ヒットも飛ばしたものの、ボーカルの死により解散した伝説のバンド・サウザンドリバー。そのメンバーは、音楽をやめる中、そのギタリスト・クスミを誘い入れて発足したバンド。それが、「赤い青」。
冒頭の事件だけ見ると、不可能状況での事件の謎を、という感じに見えるけど、それよりも作中で被害者のボーカル・ヨースケが語っていた「ロックとは?」という部分に重きを置いた話になっている、と感じた。
1980年代、90年代といういわゆる「バンドブーム」の時代。それが、終わったあと、バンド、ライブハウスを巡る状況は決して明るいとは言えない。その中で、関係者それぞれが「ロックとは?」について語っていく。サウンドだ。心だ。もっと現実的に金だ。そんな「ロックとは?」というというかけ。それと同時進行に進んでいく、ライブハウスの経営などを巡るアレコレ。一種の定義論と、その一方で、現実的なロック音楽を巡る経営とか、そういう部分の語り、というのが読ませる内容になっている。
私自身は、正直なところ、あまり音楽に造詣がない人間ではある。ただ、著者と同世代の人間で、やはり、90年代くらいの音楽シーンとかはある程度知っているし、また、その時代と比べてCDの売り上げであるとか、そういうものが減っていることは知っている。そんな自分の経験談などと合わせることで、何となく、作中で語られていることについて「そうだよな」なんて思う部分が多かった。
そのため、事件の動機についても、その面が強く押し出されている。
こういうと何だけど、衆人環視の中の事件、という点での部分はちょっと霞んでしまっている部分があるのは否めない。けれども、ひたすらにロックとは? という問いかけがされ、その中でのそれぞれの回答。音楽への想い、ということがあるからこそ、その事件の状況という謎についての肩透かし感は殆ど感じなかった。それよりも、事件直前のある出来事が意味していたものが深く感じられてくる。
形の上ではミステリ作品であることは間違いない。けれども、それ以上に、音楽論、というように思える部分が多かった。
もっとも、私が音楽などについて疎い「ニワカだから」と言われれば、反論のしようがない(笑)

No,5021

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