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私は存在が空気

著者:中田永一



ある超能力を手に入れた物語を描いた短編集。全6編を収録。
まぁ、既に公表されているから言ってしまうけど、本書に収録された話って、乙一名義、それもデビューしたばかりの頃の作風に近いような感じがする。
1編目『少年ジャンパー』。幼いころから醜い容姿がコンプレックスで、引きこもり生活を送っているカケル。ある時、親戚が集まり、部屋から出られなくなった。しかし、トイレに行きたい。そんなとき、瞬間移動が出来る能力に目覚める。そして、そんな移動能力をする中、遠距離恋愛中という瀬名先輩に出会って……
これなんかは、モロに「白乙一」なんて言えそうな物語。自分の、醜い容貌を馬鹿にするわけでもなく、普通に接してくれる瀬名先輩。遠距離恋愛中だ、という先輩と共に、地元福岡から、恋人のいる東京へ行くのだけど、浮気をしていないか、という割にスイーツの店を調べまくっていたり……。恋愛の邪魔はしたくない。でも、瀬名先輩が好きだ。だから……と奮闘していく成長物語に……。全体的に爽やかな物語。
2編目『表題作』。幼いころからDVを繰り返す父の下、存在感を消して暮らしてきた伊織。ある時、本当に周囲に気づかれないようになって……。そんなある日、自分を認識できる春日部さやかと出会い……。
作中で、『ドラえもん』の「石ころ帽子」という名前が出てくるけど、まさにそんな感じ。自分を認識できる春日部さんと仲良くなり、バスケ部のエース・上条先輩の写真を近くで撮る……なんていうことを始めたり。と、ここまでは1編目っぽいのだけど、そこから思わぬ展開に。このオチは賛否ある気がするのだけど、予想外の展開と、でも、爽やかな終わり、というのは確か。
『ドラえもん』的と言えば、『スモールライト・アドベンチャー』。文字通り、スモールライトで小さくなってしまったオレが、誘拐されてしまったクラスメイトの少女・栞を助けようと奮闘する話。なんか、まんまドラえもんとかでありそう(ドラえもんで、そんな殺伐とした話があるかよ、というツッコミは禁止だが)
ちょっとした題材から、爽やかな印象の話に仕上げる。やっぱり、デビュー当時の乙一さんっぽいんだよな……

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