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スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼

著者:志駕晃



「今やっている児童ポルノの作業は後回しでよいので、先にこのHDを調べてほしい」 神奈川県警生活安全サイバー捜査課の桐野は、上司の命によって、あるHDから、一人の女性について調べるよう言われる。そのHDは丹沢山中連続殺人の犯人のPCのもの。6人の女性が殺されたその事件において、逮捕された浦井は5人までは容疑を認めているものの、その事件については否認している、というものだった。一方、その頃、世間では巨額仮想通過流出事件と、そこに一人のホワイトハッカーが立ち向かっていることが話題になっていた……
ということで、著者のデビュー作『スマホを落としただけなのに』の続編にあたる作品。
ただ、正直なところ、今回は「スマホを落とした」という要素は一切ない。前作のように、落としたスマホをハッカーに拾われ、そこで個人情報を奪われ……という話の流れにはなっていない。
じゃあ、どういう話なのか? というと、先に書いたように前作の犯人・浦井の事件について捜査をすることになった桐野。しかし、そこで浦野が言い出したのは、自分の犯行の方法は「M」というブラックハッカーから学んだもの。そして、そのMを追う中で、仮想通過流出事件で注目を集めていたホワイトハッカーが何者かに殺害され、その犯人がMではないか? という疑惑が出る。そこで、浦井を捜査に加え、その犯人を追う……というもの。
そこで描かれるのは、桐野&浦井のチームとMのサイバー戦争とでも言うべきもの。ハッキングなどを駆使して、桐野らの情報を個人情報を入手し、周囲を巻き込んでの脅迫を賭けてくる犯人。さらに、警察のウェブサイトなどをハッキングしての攻撃まで……。それに対しある程度の違法捜査なども含めて対抗していく桐野たち。テンポの良さ。その中で、次々と起こるアレコレ……ということもあってグングン読み進めることが出来る、というのは何よりもの長所だろう。
ただ……その一方で、サイバーセキュリティの限界とか、そういう部分での怖さ、というのはわかるけど、前作の個人情報の漏洩とかが「便利なアプリで」で済まされたのと同様に、こちらも「凄腕のハッカーだから」とかで上手いこと済まされてしまっている、という感があったのも確か。また、登場人物を鑑みて、メタ視点で見て……で、何となく犯人が、というのもあったのも確か。私自身、こうやって、ブログに感想を書いていて、ネット通販などを使っていて……という生活を送っているので無視することは出来ないのだけど、どうしても、スマホを落とすだけで……という身近さを感じた前作に比べると本作は「別の世界」感を感じてしまう部分がある。好みの問題、と言えばそれまでなのだけど、前作ほどの魅力が感じられなかった。
決して悪い作品ではないし、テンポの良さとかで引き付けられることは間違いない。でも、何か、「うーん……」と思う自分も居たりする。

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