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ジャナ研の憂鬱な事件簿5

著者:酒井田寛太郎



「真実」への向き合い方についての対立から、すれ違ったままの啓介と真冬。まもなく真冬が卒業を迎える、というそんなとき、啓介は、ユリの提案でかつて旧ソ連の強制収容所でおきた「クリスマスの奇跡」についての考えを求められて……
シリーズ完結編。
なんか、思ったよりもアッサリとした形だったなあ、というのがまず思ったこと。今回も3作の連作短編形式。
1編目は、教会のシスターの夫が残した、という手記の記述から、その真相を。ソ連の強制収容所。思想犯が集うそこに一人の牧師見習い。ただ圧迫され、看守の気分次第でいくらでも収容者が虐待、殺害される、というそこで、その男は「クリスマスイベント」を目論むのだが……。
こういうと何だけど、男がやろうとしていたこと自体は、描写から「こうだな」というのは予想できる。しかし「事実に即して書いた」というその手記にシスターの夫はいない。となると、夫は何だったのか? それは……
以前、真冬との間で対立した「真実」を巡っての啓介の考えがここで変化をして……
ある意味で、あとの2編はエピローグというか、謎解き自体は、いつも通り、という感じではある。消えた婚約者は何者だったのか? という2編目。そして、学校のイベントで起きた不可解な事件の3編目。それぞれ、その背景に人間のエゴがあり、また、社会問題なども孕んだものではある。ただ、啓介自身、はたまた、真冬自身に直結した話なのか、というとそうではなく、あくまでも二人の目の前で起きた事件。それをどうするのか……という部分に主眼が……。そういう点でアッサリという感覚になる。
ただ、この作品、そもそもが、真実を知って、それをどう扱うのか? というのがテーマだし、真冬の事情とかは1巻でやってしまっている、というのを考えるとこの終わり方で良いのかな? というのも思う。言い方は良くないけど、派手さはない。でも、ほろ苦さなども持った青春ミステリ作品として最後までしっかりとしたものであった、というのは間違いなく言えるだろう。

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