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盤上に死を描く

著者:井上ねこ



71歳の老婆が自宅で殺害された。片手に「歩」、ポケットの中には「銀」という将棋の駒。愛知県警捜査一課の女性刑事・水科優毅は、「ホストのようだ」と揶揄される刑事・佐田と共に捜査に当たるが、次々と同様の事件が発生して……
第17回『このミス』大賞・優秀賞受賞作。
著者紹介に、「趣味は詰将棋創作」とあるけど……この作品、完全に著者の趣味全開だろ!(笑)
と、さりげなくネタバレしてみたのだけど、物語は次々と冒頭に書いたのと同じような事件が発生。2番目の殺人事件の被害者遺族が相続のために殺したのでは? という疑惑が発生。さらに、老女連続殺人という疑惑が出るが、今度は男性が……。そして、その挙句に、水科が得たのは、殺害された人の性別、年齢、そして、持たされていた駒が、将棋盤の位置、駒の配置を払わしていて、「詰将棋」を示していたのではないか? という推理。やがて、その中で、一人の自殺した詰将棋作家の存在がクローズアップされて……
人が死にすぎじゃないか? という思いがないではない。ただ、それでも、「詰将棋」がクローズアップされていくまでの、被害者たちがなぜ殺されたのか? という疑問。さらに、その理由が「詰将棋」らしい、ということが判明したのちの、しかし、どうやって被害者の個人情報を手に入れたのか? という謎。そして、さらにようやく物語の核心が絞られてきてから……のひっくり返しへ……と、テンポよく描かれていくセンスが見事。その中に、詰将棋を巡る蘊蓄や、棋譜についての説明などが入るのだけど、それについてもそれほど読了ペースを乱さずに読ませるというのもうまい。正直、詰将棋については全く知識がないし、説明されてもよくわからない部分もあるのだけど、でも、そんなに気にならなかった。
ただ……気になったのは、黒幕の動機について……
何というか、理屈としてはわかるんだ。マニアックな世界。その中で、金銭的な報酬とか、そういうものはないが、しかし、その世界で認められたい。そういう渇望というのは、理屈の上ではわかるんだ。わかるんだけど……じゃあ、その世界に詳しくない一読者として、その名誉がどのくらいのものなのか。そういうのが肌感覚で感じられないのだ。
いや、難しいのはわかっている。自分自身、別に金銭的な意味では全くプラスのない同人誌作成とかやっているわけだけど、そこに充実感とかを感じているけど、それはなかなか理解されないだろう。ただ、主人公・水科が、詰将棋についての知識などがある(ついでに言えば、著者自身も)のだから、その詰将棋作成とかの過程とか、そういうものの描写などで、もっと身近に感じさせてほしかったな、というのも同時に思った。

No.5047

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