著者:下村敦史


仲違いばかりしていた両親と仲良く遊園地へ。そして、好物の揃った夕食。そんな夢のような日の夜……両親は家に火を放った。一家心中事件。そこで、ただ一人生き残った幸子。町工場の事務員として過ごすある日、彼女は一人の男性と出会う。だが、自分は一家心中事件の生き残りと言えずにいた彼女は、両親の墓参りに行き、一家心中を図り、生き残ったという雪絵という女性と出会う……
著者の作品って、社会問題とか、そういうものを背景にしている作品も多いのだけど、本作は、そういうテーマを内包しながらも、これまでの話とはちょっと毛色が違うな、という印象。
物語は、幸子。雪絵。雪絵の娘である美香。そして、金融会社経営者の郷田。この4人のやり取りがメインになる。
先にも書いたように、一家心中事件の生き残りである幸子。そして、一家心中事件を起こしてしまった雪絵との出会いから始まる。「この人は、私の母親と同じ存在だ」 雪絵のことを知った幸子は、相談員を装って、彼女と接近する。シングルマザーとして頑張ってきたが、しかし、限界が訪れた雪絵。決して、一家心中を計画していたわけではない。しかし、一時の気の迷いで……。そんな雪絵の語りを聞き、「でも……」としか思えない幸子。そして、自分と同じく一家心中の生き残りであるその娘・美香にも接近する。さらに、かつて、自分の両親を追い詰めた郷田に対しての復讐も企てて……
ひっくり返しとかもあるのだけど、全体的な話としては、ちょっとご都合主義かな? と思える部分があるのは確かだったりする。でも、それでも、読ませるテーマ性というのは十分に感じる。
それは、「被害者」と「加害者」。正反対の存在であるように思える両者。しかし、「自分は被害者である」ということを武器にすることで、一方的に相手を攻撃できる存在となる。それは「加害者」と同じこと。そして、加害者は、加害者ということで常に叩かれる存在となり得る。そして、被害者が加害者に転じたときには……。
この作品の場合、実際の事件の加害者、被害者ということになるのだけど、SNSの炎上とか、ああいうのが世を騒がせているだけに、その辺りを頭に浮かべながら読んだ。
No.5049

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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仲違いばかりしていた両親と仲良く遊園地へ。そして、好物の揃った夕食。そんな夢のような日の夜……両親は家に火を放った。一家心中事件。そこで、ただ一人生き残った幸子。町工場の事務員として過ごすある日、彼女は一人の男性と出会う。だが、自分は一家心中事件の生き残りと言えずにいた彼女は、両親の墓参りに行き、一家心中を図り、生き残ったという雪絵という女性と出会う……
著者の作品って、社会問題とか、そういうものを背景にしている作品も多いのだけど、本作は、そういうテーマを内包しながらも、これまでの話とはちょっと毛色が違うな、という印象。
物語は、幸子。雪絵。雪絵の娘である美香。そして、金融会社経営者の郷田。この4人のやり取りがメインになる。
先にも書いたように、一家心中事件の生き残りである幸子。そして、一家心中事件を起こしてしまった雪絵との出会いから始まる。「この人は、私の母親と同じ存在だ」 雪絵のことを知った幸子は、相談員を装って、彼女と接近する。シングルマザーとして頑張ってきたが、しかし、限界が訪れた雪絵。決して、一家心中を計画していたわけではない。しかし、一時の気の迷いで……。そんな雪絵の語りを聞き、「でも……」としか思えない幸子。そして、自分と同じく一家心中の生き残りであるその娘・美香にも接近する。さらに、かつて、自分の両親を追い詰めた郷田に対しての復讐も企てて……
ひっくり返しとかもあるのだけど、全体的な話としては、ちょっとご都合主義かな? と思える部分があるのは確かだったりする。でも、それでも、読ませるテーマ性というのは十分に感じる。
それは、「被害者」と「加害者」。正反対の存在であるように思える両者。しかし、「自分は被害者である」ということを武器にすることで、一方的に相手を攻撃できる存在となる。それは「加害者」と同じこと。そして、加害者は、加害者ということで常に叩かれる存在となり得る。そして、被害者が加害者に転じたときには……。
この作品の場合、実際の事件の加害者、被害者ということになるのだけど、SNSの炎上とか、ああいうのが世を騒がせているだけに、その辺りを頭に浮かべながら読んだ。
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