fc2ブログ

それでも空は青い

著者:荻原浩



7編を収録した短編集。
全体を通してちょっともの悲しい部分がありつつも、しかし、最終的に次の一歩を、という読後感を覚えるエピソードが多いかな? という印象。
表題作となるものはないけど、表題作っぽい雰囲気を感じるのは1編目『スピードキング』。妻と別れ、失業中の主人公が知った「藤嶋が死んだ」という一方。まさか、あいつが……。
物心ついたころから父に教わり、野球ばかりしていた。しかし、父が死にボーイズリーグも退会。実力で負けたのならばともかく、家庭の事情で……。そんな思いを抱きながらの高校の野球部。そこで、知り合ったのが藤嶋で……。明らかに力の違う藤嶋。エースと補欠、という立場ではあるが、甲子園にも行った。紛れもなく、自分たちのヒーローだった藤嶋。そして、プロに入って伸び悩んでいた彼に復活の兆しを与えることも出来た。でも、妻とのこともあり、それが最後になった。そして、藤嶋も故障して……。残された子供はどうするのだろう? そんな思いを抱きながら……。なかなか会えなくなった子供。でも、藤嶋という存在が、大きな絆として残っている、というラストシーンが印象的。
また、作中の人物と同年代として身につまされるのが2編目『妖精たちの時間』。高校の卒業から20年。学生時代、その容姿から憧れの対象だった桜井。そんな彼女が同窓会に来るらしい。現在、求職活動中の僕は参加することにしたのだが……
10年前、仕事が順調だったころ。自分はもうすぐ結婚する、と触れ回った同窓会。そこから比べると、明らかに落ちぶれてしまった自分。そんな中、かつてと同じように美しい桜井。でも……。20年という日々によって変わってしまったもの。そして、その時間があったがゆえに知ることが出来た、憧れの人の秘密。彼女の抱えていたもの。変わらないものはない。そんな現実を知ることで、という後味が、自分自身に置き換えて印象に残った。
と思ったら、3編目『あなたによく似た機械』はブラックジョークみたいな話だったし、5編目『君を守るために、』、6編目『ダブルトラブルギャンブル』もちょっと変則的な話。1編目辺りとはカラーが変わってきたな、という感じは受ける。
この辺り、どっちが好きか? という好みの問題もあるのかも。
私は、前半、特に最初の2編が印象的で好きだった。

No.5056

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0