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ダンデライオン

著者:中田永一



11歳の野球少年・下野蓮司は、大人の姿で目覚めた。自分の知っている時から20年後の世界。婚約者であるという小春は、20年後の自分と意識が一日、交換されたのだという。一方、11歳の肉体に宿った大人の蓮司は、ある目的のために動き出して……
一日だけの入れ替わり。しかし、それが非常に大きい。ミステリとして、真犯人は誰なのか? そんな謎はあるけれども、わずか1日が、しかし、人生にとって大きな岐路になったのだ、という部分が印象的。
物語は、(中身が)11歳の蓮司と、31歳の蓮司の視点で綴られていく。特に、(中身が)11歳の蓮司のエピソードが印象的。
目覚めたら20年後の世界。しかも、小春、という婚約者がいて、いきなり彼女の保護者的な立場であった叔父の元へ挨拶に行く、という。移動中に目にするのは、自分の知っている街とは全く違ってしまっている街。そして、何よりもの衝撃は、自分の肉体。野球に明け暮れ、プロ野球選手になりたい、という夢は絶たれてしまっている。「夢はかなわない」そんな現実を突きつけられ、しかし、でも、そうなりたくない、という想い。
その一方で、31歳の心が宿った子供時代の蓮司。彼が向かうのは、住んでいる東北から遠く離れた鎌倉の地。目的は、ある事件を防ぐこと。そして、その事件の犯人を探ること……
それぞれ、異なる形での物語。しかし、非常にテンポよく展開していくので、サクサクと読むことが出来るのは流石の一言。そして、その20年前の事件の真相が判明した時……。作中でも何度も、タイムパラドクスが……というようなことが言われていたのだけど、未来の自分がタイムスリップしたことで一つの夢が失われ、しかし、その一方で……というのはなかなか切ない。2つの夢が両立することは不可能だった、ということになるわけだし……。
そんな中でも、それを知らず、しかし、未来への希望を持つ11歳の蓮司。その逞しさがあったからこその未来。
そういうことになるのかな? と……

No.5059

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