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銀座ともしび探偵社

著者:小松エメル



大正時代の銀座の街に溢れる「不思議」。不可解な出来事が溢れるこの街で、不思議は、宿っていた存在から離れると橙色のともしびとなり、探偵たちの持つランプへと収まる。そんな「不思議」を集める探偵たちが集まる探偵社を舞台とした連作短編集。
文字通り「何とも不思議な話」。
「不思議を集める探偵」というから、不可解なことが起こり、それはどういう原理で起きているのか? というのを解き明かしていく物語なのかな? と思っていたのだけど、そういう予想とは全く違う物語にちょっと困惑しつつも引き込まれた。どちらかというと、不思議な出来事と、人間のかかわりあい、というようなものが主になるのかな?
ある意味、最もオーソドックスなのが1編目『サチの足跡』。銀座の街を彷徨い歩く少女・サチ。「あれ」を探さねば。しかし、話しかけても、殆どの人は応えない。それでも、町を彷徨いながら歩く彼女の前に、声をかけてくる者たちが……
1編目からいきなり、探偵社の面々ではない視点から、という意味では変則的なのだけど、なぜ、人々は応えてくれないのか? そして、そんな少女・サチが彷徨っていた理由。古くから人々に慕われていたものが、時代の変遷の中で忘れ去られて行って……。比較的シンプルな話なのだけど、作品の雰囲気、時代背景などをしっかりと把握させる、という意味でもよい導入編だと思う。
「不思議」との付き合い方、という意味では2編目『白い箱』。街で倒れていた老人を助けたお礼に、と、「欲しいもの」が入っている、という箱をもらった町川。それを開けると……
探偵社の中で、不思議をその目で見ることのできない町川。そんな彼が、真に辺りにする不可思議な世界。いつもとは違っている探偵社、銀座の街。その中で彼の頭によぎるのは探偵社に入るきっかけとなった所長の言葉。自分は、不思議という存在とどういう関係になりたいのか? その先に待っていたものは……。この作品では「不思議」という存在だけど、何かに対する憧れ。憧れだけではうかがい知れないものもある。いざ、それを手に入れられるようになったら? そんな問いかけは重い。
一方で、『知らない声』。こちらは、堅物であり、ある意味、俗物でもある父と、そんな父に追随するしかない母に育てられた野瀬。自分のお気に入りも、そんな両親の下、全て封じ込められて……。こっちもまた、自分の夢、それは何なのか? 家族との関係。そういうものをどうしても思わずにはいられなかった。
ミステリというよりも、ガッツリと不可思議な話が前面に出た話。ただ、それを前にして、時代とか、そういうの関係なしに誰にでもあるであろう感情を思い起こさせ、その中での色々なことを思わずにはいられなかった。

No.5068

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