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インソムニア

著者:辻寛之



PKOに派遣された陸上自衛官7人。1編目。人が現地で殉職し、帰国した6人だったが、その1人が間もなく自殺した。殉職した隊員の遺体が戻らない、という状況の中、他医院のメンタルケアを担当する神谷は、彼らのケアを命じられて……
第22回、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
正直なところ、私は自衛隊の部隊編成とか、そういうものについては全くの無知。故に、「違うだろ!」とか判断することは出来ない。ただ、何か違和感を感じる部分があるのは確か。ぶっちゃけ言うと、作戦行動をする小隊とかって、男女混合なのか? という想いが出るだけに。
読んでいて、どうしても、その部分が引っかかってしまったのだけど、そういうものを排除した形で読むと、次々と現れる新事実の連続という流れに引き込まれた。
物語は、冒頭、物語の中心となる神谷、そして、同じくメンタルケアを担当する女性自衛官・倫子というものが紹介され、その後は、小隊の隊員たちの視点で綴られる章を続けていく形で綴られていく。メンタルケアのためには、正確な事実を把握する必要がある、という神谷。その神谷の面会に、回答していく隊員たち。その中で綴られていくのは……
現実の政治の世界でもあったように、PKO派遣などについての色々な問題がある中で、実際に戦闘行為が行われ、その中で、表向きにはできないが「人を殺した」という事実があるような序盤の証言。しかし、時間が経過し、関係者が次々と自殺や、依存症になる中で明らかになっていく、当時の出来事……
「人を殺した」こと? しかし、それは誰を? 小隊の中の爛れた人間関係? 現地の風習?
それぞれの人物の独白を含めた話によって、少しずつ、当時の状況が鮮明になっていく。その中で、隊員たちがひた隠しにしていたものは……というある意味での、後味の悪い結末というのは魅力である。それ自体は間違いない。何と言うか、その次々に明かされていく事実、に惹かれた、ということになるのだろう。
結構、時事ネタとかを扱っているので、だからこそ、実態との齟齬とか、そういう部分が……というのはあるんじゃないかと思う。この辺は悩ましい部分じゃないかと思う。ただ、単純な物語の面白さはあると思う。

No.5097

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