FC2ブログ

少女葬

著者:櫛木理宇



一人の少女が壮絶なリンチの末に殺害された。その様子を撮影した動画、画像はSNSなどを通じて拡散された。そんな死体画像を見つめる一人の少女。彼女は、殺害された少女と共に生活したことのある家出少女。劣悪な環境で、確かに芽生えていたはずの友情。しかし、別離してしまった。心優しい少女は、なぜ、殺害されたのか? そして、二人の運命を分けたものは……
重い。とにかく、重い。
厳しい、というか、ある意味で、自分の正義だけを信じて疑わない父と、その父に従うだけの母。そんな両親の束縛から逃れるため、ある日、貯めてきた金を持って逃げ出した綾希。そんな彼女が住みかとしたのは、格安のシェアハウス。しかし、一部屋に何人もの人間が押し込まれ、私物すら住人同士で盗み合う、というような環境。そんな場所へ、新たな住人として入ってきたのが眞実。素直で、心優しい眞実と、綾希は仲良くなっていくのだが……
シェアハウスの仕切り役的な存在のパパ、ママ。さらに、貧困ビジネスで違法に金を稼ぐオーナーと、その取り巻き……。そういう存在も物語にとって、大きなものとなるのだけど……
個人的には、この作品のポイントは「強さ」「弱さ」とは何なのか? という部分なのかな? というのを強く感じた。シェアハウスの住人の一人が言う「自分の母親は弱い人間だ。だから、帰らない」という言葉。弱さ故に、他者に頼り、そして、利用されるだけの人生。そんな弱い人間にはなりたくない。
そんな言葉を前提として、綾希と眞実の二人を見比べると……
素直で、優しく、周囲ともすぐに打ち解けることが出来る眞実。しかし、それは同時に周囲に流され、断る、ということを意味する。そして、そんな部分を利用され、だんだんと落ちていく。一方の綾希は、その劣悪な環境にありながらも、絶対にこれだけは譲らない、というものを持ち続けた。そして、そんな彼女にあった一つの出会い。端的に、両者の違いを、ということでいえば、そうなるのだろう。
ただ……それも、一つの奇跡のようなものだった、という感じもする。確かに、綾希は、自分の中で一つの「線引き」を持っていた。けれども、それが理由で「気にくわない」という悪意によって……ということだって起きるかもしれない。一方で、眞実は、素直で周囲とすぐに打ち解けることが出来る。そんな彼女だからこそ、真っ当な人間と出会えば、簡単に立ち直れたかもしれない。そういう風に考えていくと……
作中において、二人の運命を分けたのは「強さ」「弱さ」だったのかもしれない。でも、それって、結局、何なのだろう? そんな風に思えてならなくなってきたのも確かだったりする。

No.5122

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト

COMMENT 0