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人間狩り

著者:犬塚理人



20年前に起きた14歳の少年による女児殺害事件。その殺害の様子を記録した映像が闇サイトで売買されている。その映像は、警察で保管されていたはず。流出させたのは……。警視庁人事第一課監察係の白石は、当時の関係者を捜査するよう命じられる。その頃、カード会社で督促の仕事をする江梨子は、「カードを止められたせいで、娘が自殺した」というクレームの電話を受ける。それは、本当なのか? 個人的に、その債務者の元へ向かった彼女は、その債務者の悪事を知って……
第38回横溝正史ミステリ大賞・優秀賞受賞作。
何か、いかにも現代的、という感じがする作品。
物語は冒頭に書いたように、監察官の白石と、カード会社の社員である江梨子の視点で綴られる。白石は、冒頭の通り、警察に保管されていたはずの映像を流出させた犯人を捜すために。そして、江梨子は、債務者の行動を思わず撮影し、ネットにUPしたことで、悪事をネット上で糾弾する「自警団」としての活動をすることになって……
誰が、なぜ、その映像を流出させたのか? 可能性として、20年前に逮捕された「少年A」が自分で持っていて、ということが考えられる。しかし、彼は、そのとき、病で入院していたらしい。となれば、当時の捜査官? 金目的? それとも? 一方、江梨子は、自分がきっかけで、その債務者が逮捕されたことで、「自警団」をしている人々と知り合う。小さな悪事などを糾弾することもしつつ、もっと、大きな悪を糾弾したい、という気持ちになっていく。そんなとき、彼らの目標となったのは、大事件を起こしながら、医療少年院に数年いただけで社会復帰をした「少年A」……
読者としては、映像を流出させたのは「少年A」ではないことが、白石視点でわかっている。けれども、江梨子たちは、そうではない。「また少年Aか」 そんな思いで、少年Aの正体を探ろうとしていく。明らかなネット民の暴走。だが、それが原因で、今度は……
堅実な捜査によって、流出させた犯人を絞り込んでいく白石と、暴走によって突き進んでいく江梨子。その中で、江梨子たちは、その「少年A」の平穏を破壊し、今度は狙われる存在になっていく。そして……
二つの物語がどういう風に交錯し、結びつくのかな? と思ったら、ちょっとその部分は弱かった気がする。ただ、それぞれのカラーの違い。テンポよく進んでいくリーダビリティ。そして、ひっくり返し、としっかりと作られた物語には好感。さらに、その背後にあるもの……
ある種の暴走ではあるのだけど、でも、理不尽だ、と感じるところが……というのがあるんだよな。ゴリゴリに社会問題とかを題材にした作品ではないので、そんなに掘り下げているわけではないけど、このくらいでとどめることで、逆に良いアクセントになっているように思う(これが、変にそこを主張し始めると、司法の話とかになって、却って一方的だな、と感じたりすることもあるので) そういうバランスの良さも持っているんじゃないだろうか。
ネットとかの話を題材に、うまくエンタメに昇華した佳作だと思う。

No.5124

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