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夫の骨

著者:矢樹純



家族を題材にした9編を収録した短編集。
なんか、表紙の印象、さらに家族という題材ということから予想されるように、ちょっとドロッとした感情を掻き立てるようなエピソードが多く、各編の分量に比して凝縮された話、という印象を抱いた。
1編目である表題作。
前年、夫が山で事故死した。それはまるで、2年前に死んだ夫の義母(夫の父の後妻)の後を追うように。そんな夫の遺品を整理する中、桐箱の中から、乳児の骨を発見して……。父の後妻、ということで距離感をもって接していた二人。しかし、夫の父が死んだとき、夫は後妻を自分の家で引き取る、と言い出した。そういえば、夫を見る目は、何か熱を帯びていたようにも感じる。そして、乳児の骨。もしかして……。そんなことを考えていたのだが……。夫と義母の関係はいったい何なのか? ある意味で、安心が出来るようにしっかりとした謎も解明される。されるのだけど、でも、その人間関係の捻られ方によって、何か不安な読後感も残る。
インパクト、という意味では『柔らかな背』。同居している娘が自分の生活に口出しをしてきて面白くない想いをしている日々。そんなとき、孫(娘にとっては甥)から、「金が必要になったから助けて」という電話が掛かってきた。娘には内緒で、何とかしてやろうと考えるのだが……
物語の流れとして、主人公が高齢者で、恐らくはちょっと認知症などの症状も出ているのではないか? そして、明らかに振り込め詐欺だよな、というのがわかっている状態で読むことに。娘との確執。でも、明らかに騙されていて……という中で、娘が自分の金を使い込んでいるのでは? という疑惑なども湧き上がってきて……での、結末。主人公の思わぬ行動力と、やっぱり……以上の真相があって……。そこへ落とし込む、という部分に驚かされた。
作品のカラーとしてドロッとしているし、ほろ苦い結末の話とかも多いのだけど、各編30ページくらいの分量で、この濃密さ、というのは見事だな、というのを思う。

No.5128

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