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人生写真館の奇跡

著者:柊サナカ



あの世とこの世の狭間に佇む写真館。そこでは、訪れた死者が、その年の数だけ自身の写真を選び、走馬灯を作り上げる。案内人は、過去の記憶を持たない青年・平坂。そして、来訪者は、最高の写真を撮るために希望する過去へと一日だけ、平坂と共に戻ることが出来る……
そんな写真館を舞台にした連作短編集。全3編を収録。
なんか、「奇跡」と言うタイトルがついているけど、奇跡というよりも、純粋に綺麗な話だな、という感じ。
1編目『おばあさんとバスの一枚』。写真館に辿り着いたのは92歳になる老婆・ハツ江。長年、保育士として、多くの子供たちの面倒を見てきた彼女が戻ったのは、その保育園が出来た時代。建物もなく、給料だって遅れがち。近所からは「うるさい」というような苦情も出て……という苦境の中。けれども、子供たちを預かり、世の母親が社会に出る手助けをしたい、という一念で……。やがて、そんな奮闘に賛同者も出てきて……。まだまだ、子守は大人の仕事ではない、なんて言われていた時代の中で、自分の信念を貫き、そして、その頃の情熱をそのままに、というハツ江の生きざまが凄く印象的。
2編目『ねずみくんとヒーローの一枚』。何者かに殺害されたヤクザの鰐口。彼が戻りたい、と思ったのは、マネーロンダリングのために設立したリサイクルショップで雇った「ねずみくん」という一人の青年とのこと。
先に書いたように、目的は組織のマネーロンダリングのため。別に、リサイクルショップを繁盛させるつもりもない。しかし、形だけでも、ということで雇うことになったのは、挨拶なども出来ないおかしな青年。その態度に、舎弟は苛立ちもしたが、様々な構造を徹底的に追い求め、そして、その修理を完成させる彼が何となく気に入る。暴力の世界で生きてきた鰐口が何か、親心のようなものを発揮させる相手。そして、そんなねずみくんに触発されて……。何者かに殺されて、とか、そういう部分じゃなくて、ただ、自分の最低な生き方をちょっと振り返らせてくれた相手に、という部分をクローズアップして、爽やかな話にしているのが印象的。
そして、3編目はそんな案内人・平坂についての部分も垣間見えるエピソード。過去2つのエピソードがちょっとずつ繋がっていて……。多少、わかりづらいかな? と思うところもあったけど、しっかりとまとめ上げた、ということで締めに相応しい話と言えるのだろう。

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