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東京クライシス 内閣府企画官・文月祐美

著者:安生正



前日からの豪雨により、荒川の決壊が懸念される首都圏。そんな中、千葉と埼玉で大規模な竜巻が発生する。変電所が破壊され、23区を始めとした大規模な停電が発生する。鉄道会社は運休を決め、帰宅困難者が街にあふれ始める中、政府は、場当たり的に防災計画を変更する中、遂に荒川が決壊し、墨田区が水没し始めて……
という粗筋を書くと、パニック小説みたいな感じになるよな……
物語は、著者の作品ではおなじみの、いくつもの視点を繰り返す形でのもの。そして、その中の主人公の一人が、タイトルにもある内閣府の企画官である文月祐美ということになる。ただ、内閣企画官という立場の彼女が中心になる、ということもあり、物語としては街の様子以上に、政府の方針を巡ってのゴタゴタというような部分に主眼が置かれている、と言った印象。
まぁ、何と言うか……この政府、酷い(笑) 理想を掲げて、政権交代を実現した内閣。理想に燃えた元党首が急逝し、その理想を、という首相だったが、その理想論にハマり政策は空回り気味。内閣の大臣たちは、その中で自らの責任を取ろうとせず、首相のブレーンたる学者・桐谷と顧問団に丸投げ。そして、その学者の指示により、その行動は場当たり的なパフォーマンスに終始していく。
そんな中で、政府の行動を軌道修正すべくに行動をするのが、文月であり、東日本大震災の際、同じ立場にありながら何もできなかった、という後悔を抱えた加藤。だが、政治主導を掲げるブレーンの桐谷はそれをはねのけて……
「政治主導」という理想の中でただただ空回りを続ける政府と、そんな中にあっても政府を支えながら、国民を……という桐谷と文月の攻防。さらに、そんな状況の中、なぜか自治体、特に東京都に対して厳しい形の決定を下す彼らの意図は? という謎。この辺りの迫力は確かにあり、基本的には「会議室の中の物語」ではあるのだけど、ぐいぐいと惹きつける力、というのは間違いなくある。そして、そうやって、何とかギリギリのところで踏みとどまった結末も良かった。
……のだけど、その一方で、その桐谷ら顧問団の中に、実は……という野は、『レッドリスト』と同じパターン。しかも、その部分の結末も、その黒幕とか、そういう部分は投げっぱなし。何か、気持ち悪さが残る。そういう黒幕の存在があっても良いと思うけど、そこは曖昧なまま……とかでもよかったんじゃないかな? と思えてならなかった。

No.5137

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