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キリングファーム

著者:島田明宏



北海道は羊蹄山の東、支笏湖に連なる山間で競走馬を育成する風死狩牧場。企業に失敗した藤木祐介は、そこで働き始める。まるで要塞のように塀で囲われ、地元の人びとからは不穏な噂を耳にした祐介だったが、しかし、サラブレッドの育成、そして、その馬の活躍にだんだんと惹かれていくことに。だが、そんな中でスタッフが次々と失踪。さらに、失踪したと思われた元スタッフが次々と変死体となって発見されて……
ちょっと待てい!!
思わず、そうツッコミを入れたくなるような結末だと思ったのは私だけか?
物語の大筋の流れは冒頭に書いた通り。物語の序盤は、本当に、全く競馬という世界を知らなかった祐介が、生産牧場に就職し、そこでの生活に慣れるまで、をかなり丁寧に描いている。各地から集まってきた牧場のスタッフ。いきなり敵意を向けてくるような青年もいるし、言葉にどもりがありながらも、一生懸命に馬たちを見ている獣医もいる。ちょっとおかしなところはあるし、肉体労働であるがゆえに、人の出入りも激しい。けれども、実際、牧場が生産した馬がレースで活躍する姿を見て、そのやりがいを感じる。そんな生産牧場での日々、というのが続いていく。
しかし、そんな中、祐介は、牧場の近くで失踪したというスタッフの遺体を発見してしまう。最初のそれは、自殺として処理されるが、やがて、第二、第三の変死体が見つかり、さらに、少しは心が通じたと思われた同僚までいなくなって……。牧場の土地に工場を作りたい、という製菓メーカーの思惑。さらに、そもそも、牧場の規模に対して明らかに多すぎるスタッフは何なのか? などという疑惑まで出てきて……
元々、怪しげな部分がありつつも、サラブレッド生産の世界の清々しさ、という流れから始まり、今度は一気に疑惑が深まって……という物語の流れの捻り方はなかなかお目にかかれないもので見事の一言。後半は、色々と後ろ暗いところがあるのだろう、というのが明らかになり、どう着地するのか? という興味がわき、一気に読み切ることが出来た。そういう意味で、読ませる力は見事の一言。
ただ……このオチは良いのか? という気分になるまとめ、でもある。作中で描かれているこの辺りのルールが本当にOKなのかどうかはわからない。ぶっちゃけ、それをすること自体はマイナスと思っていない。けれども、そのために、どれだけ犠牲者を出しているのか? そして、そのことを祐介自身、さらに、疑惑をもって牧場に来た騎手は受け入れられるのか? というとかなり疑問。どーしてそうなった? という風に感じられてならないのだ。さらに言えば、これだけ失踪者、変死者を出していて、警察やらは何もしないのか? とも……
物語の緩急のつけ方。どこへ向かうのかわからない恐怖感。そういうもので、読ませる力は十分にあるのだけど、流石に設定などに無理がありすぎる、とも感じた。

No.5140

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